46大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索するなか、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、公設民営方式の私立大学から2019年度に公立化した公立千歳科学技術大学で、宮永喜一学長にお話を伺った。公立千歳科学技術大学は、1998年開学の千歳科学技術大学が2019年に公立化した大学だ。「光科学技術の教育研究拠点」となることを目指し、千歳市の支援を受けた公設民営方式で1998年に光科学部1学部2学科で発足。す。さらに、学生の多くが北海道内の出身であるため、地域連携を強力に進めることも重要です。こうした状況から、2019年に公立大学として再スタートを切りました」(宮永学長)。「学ぶと働くをつなぐ」キャリア教育の観点からの問題意識として宮永学長はまず、近年の学生が「いろんな会社から、どういうことができなければいけないとか、インターンシップで実質的な能力を測りたいとか、協調性も人間力も必要とか、いろんなことを言われる」ことを懸念する。「そういう状況にいる学生に対して、大学がキャリア教育をきちんとしていかないと、何も分からないまま就職活動して、なかなかキャッチアップできないのではという感じはします」(宮永学長)。キャリアセンター長の吉本直人教授も同様のことをこう語る。「就職活動にあたり、情報が非常に多い。しっかりとビジョンを持った学生は少数で、多くの学生は情報の多さをメリットとして活かしきれてないところがあります。2015年、光科学にとどまらず、広い範囲の理工学を対象とする理工学部に改組。2019年、「地域連携」や「研究力」の強化と、「グローバル化」の推進を目指して公立化した。その道のりを、2021年4月に就任した宮永喜一学長は、研究者の観点を交えてこう説明する。「日本は、1998年当時も現在も、光科学の分野で世界のトップレベルを走っています。ただ、例えば光通信を大規模なネットワークにして、そのネットワークの上でサービスを提供するという場合、ネットワークを構築するためのシステム、そのネットワーク上で動くサービス等、いろんな技術を取り入れてやっていくことになる。たとえ光デバイス技術がすぐれていても、それだけでは世界ナンバーワンというわけにはいかないのです。異分野の領域同士が融合し、新しい技術を生み出す必要性に直面し、本学でも、各領域の融合による異分野連携研究・教育を進めるよう、改組が重ねられてきました」。「公立化については、北海道の玄関であると同時に、日本の玄関の1つといえる大きな国際空港を持つ千歳市が、国際都市としてグローバル化をいっそう推進することが1つの理由でリクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 202132公立千歳科学技術大学千歳市の産学研究・地域活性化の拠点を目指す宮永喜一 理事長・学長キャリアについてビジョンを持った学生を育成光科学技術の教育研究拠点
元のページ ../index.html#46