カレッジマネジメント230号
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リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021尖ったキャッチコピーで現時点での差別化を狙うブランディングも、猫も杓子も取り組んでいるSDGsという「正しい」社会課題の解決に取り組む経営も、それだけではブランド力向上は望めない。ブランド力の向上のハードルは上がっている。同時に、ブランドは重要性を増している。それは、機能価値では評価できない価値こそが、社会課題解決を導くTrue North(=北極星)になりうるからである。その意味するところは、「『人が主軸』にある『らしい』『為したい社会』を確信させてくれるブランディング(=ブランド創り)」の必要性なのである。まず、今必要なブランドとは何か、から考えたい。全ての企業や大学は、ステークホルダーが能動的かつ確信的にその企業や大学を選択する理由を作らなければならない。肝は「確信的に」という点である。それには、気持ちの上でのコミットメントが必要になる。過去においては、この「確信」は定量化できる価値(=機能価値。例えば、燃費が35km/LのAブランドと31km/LのBブランドでは確信的にAブランドを選べる)の比較から導き出されていた。しかし、ほとんどの製品やサービスがコモディティ化している今、求められている「確信」は、「体験」と「成果」から演繹的に導かれる「心の状態」である。それはつまり、堅固な機能価値に立脚した、「情緒的(i.e., Emotional)」「心理的(i.e., Mental)」「精神的(i.e., Spiritual)」価値の階段を上12ステークホルダーが能動的かつ確信的に大学を選択する理由を作る社会課題解決だけでは埋もれる時代においては、「人が主軸」にある「らしい」「為したい社会」を確信させてくれるブランドが必要だContribution寄稿並木将仁株式会社インターブランドジャパン代表取締役社長 兼 CEO2015年にインターブランド参画。顧客体験をベースとしたブランド価値の向上を、ロジックとクリエイティブの融合から実現することを主眼として、クライアント支援を実践している。著書に『ブランディング 7 つの原則』(日本経済新聞出版社)等。インターブランドは1974 年にロンドンでの設立されたブランディング専門会社。インターブランドジャパンは、ロンドン、ニューヨークに次ぐ第 3 の拠点として1983 年に東京で設立された企業である。大学が取り組む社会課題解決はブランド力にどのように関係するのか

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