カレッジマネジメント230号
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リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021建学以来「実学主義」を掲げ、食料、環境、生命、健康、エネルギー、地域再生等の諸課題に対して実社会と関わりながら解決に向けて取り組んでいる東京農業大学。その教育・研究対象が2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)によって解決が目指されている地球上の諸課題と合致することから、近年は全6学部23学科152研究室を挙げてSDGs達成に向けた教育・研究に力を入れている。その取り組みと今後の展望について江口文陽学長に伺った。「本学にとってSDGsは決して新しいものではなく、従来取り組んできた社会課題そのもの」と話す江口学長。実際、「農林水産から得られる素材や材料の衣食住への活用について、理論はもちろん社会への実装方法も教育・研究することを重視する実学主義」(江口学長)のもと行われている教育・研究は、農学系と聞いてすぐに思い浮かぶ作物の生産にとどまらず、良いものを安く届ける流通も含まれる。また、世界の食や環境、資源にも目を向け、豊かな国とこれから発展していく国との格差をいかにして埋めていくかというところまで教育・研究を行っている(図1)。全学を挙げたSDGs達成に向けた取り組みとともに、ブランドの醸成も見据えて新たに注力を始めているのが、東京農業大学が行う全ての教育・研究に通ずる「食」を横串として、教育・研究を進める取り組みだ。その一環として江口学長が推し進めているのが、「東京農業大学ガストロノミー」(図2)だ。ガストロノミーは、「美食学」等と訳されるが、現代では、食事や料理と文化の関係を考察することや、食文化・食に関わる総合的学問等の意味合いでも用いられている言葉。食材の生産やその土台となる資源・環境、流通・加工・調理、食卓上の表現等においてより良い食べ方を追求することもガストロノミーであるという考え方も広がってきている。この分野に力を入れることについて、江口学長は「時代が高速化・デジタル化して簡易に食べられるものが重視されるようになってきている今、食が疎かになっていないだろうか?と一度立ち止まって考えることが必要。そのために、私達が健康に生きていくためにはどのように食を生産・加工・流通させるのかというところに16社会課題解決に取り組む大学事例東京農業大学1.農学を牽引する教育・研究2.フィールド科学を重視した実学教育3.農ある風景のキャンパスづくり4.ブランド力発信のための即時戦略5.国際化を推進(人材を世界に還す計画)6.アントレプレナー教育による学生のためのイノベーション戦略7.食育・栄養・メンタル・健康を強化増進する学生教育・課外活動教育図1 東京農業大学が推進する施策「農学」「食」を通じて幅広い社会課題に向き合い成果を社会に実装していく独自の理念ビジョンや教育・研究の特長を生かして、現在と未来の社会課題の解決を実現する大学4校の事例を紹介する。全ての教育・研究が社会課題解決につながる豊かな食のあり方を全学を通じて考えていくCase Studies_1江口文陽 学長

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