カレッジマネジメント230号
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リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021立命館大学(以下、立命館)は2021年6月に起業・事業化推進室を設置した。何故立命館は起業を推進するのか。学校法人立命館副総長・立命館大学副学長の徳田昭雄氏にお話を伺った。学校法人立命館が2018年に策定した学園ビジョンR2030では、「挑戦をもっと自由に」をビジョンキャッチに、「新たな価値創造の実現」「グローバル社会への主体的貢献」「テクノロジーを活かした教育・研究の進化」「未来社会を描くキャンパス創造」「シームレスな学園展開」「多様性を活かす学園創造」の6つの政策目標を掲げている。それを受け、立命館大学は中長期計画「R2030立命館大学チャレンジ・デザイン」において「社会共生価値の創造」を掲げ、社会課題の解決に向けて価値創造とイノベーションに取り組む「次世代研究大学」の実現を目指すことを定めた。こうした流れを背景に開設したのが起業・事業化推進室である。設置の目的を、徳田氏はこう話す。「我々は、起業家マインドを持った学生を育成したい。本学に関わる人材が社会課題の解決を多様なレベルで実装し、『起業するなら立命館』という社会的評価の確立を目指して、また、アントレプレナーシップを育てる文化を醸成する必要性から、専門部署の開設に至りました」。専任職員は2名、研究部門等の兼務者5名ほどで構成される。図に示す通り、起業・事業化推進室は先行して展開していたRIMIX(リミックス)とBRITZ(ブリッズ)を包含する体制「SAND BOXりつめい」の要だ。それぞれの内容を見ていきたい。 まず、2019年より展開するRIMIXは、社会課題を解決する社会事業家育成のプラットフォームである。社会課題解決のマインド醸成から起業支援までの一連の取り組みを可視化し、学園内外の連携等によって拡充を図り、起業・事業化までの伴走を幅広く行う仕組みだ。立命館は2つの大学と5つの附属校を抱える総合学園であり、学園全体で行うアントレプレナーシップ教育としてこの仕組みが設計された。初等中等教育で進む探究学習のアウトプットの1つとして、良い波及効果を学園全体にもたらす期待も込められている。事業の軸となるのは学生・生徒のアイデアだが、思いだけで事業化に至るほど甘くはない。RIMIXではソニー(株)が提供するSSAP(Sony Startup Acceleration Program)と連携し、社会ニーズに対する問題意識の磨き直しやビジネス化に必須のファイナンスも行い、最終的には年末に実施される「総長PITCH THE FINAL」に挑む。2020年度は合計29チーム・93名の学生・生徒が挑戦した。現在3期目を迎える。もう1つのBRITZは、教員・大学院生・卒業生を対象に、テクノロジーを軸にした研究シーズを事業化し、社会還元する目的で設立された事業だ。発掘→価値創造→事業展開→会社設立・事業開始の4つのフェーズに分け、外部協力機関との連携のもと、各シーズに応じた支援を実施する。従来は研究部が所轄していたところ、推進室設立のタイミン22立命館大学社会課題解決に取り組む大学事例総合学園として挑むオープン・イノベーション2030年に向けた学園ビジョンと大学中長期計画が示す社会課題解決の方向性学園のDNAに根差した原点回帰BRITZ:研究シーズを事業化する支援体制RIMIX:社会事業家育成のプラットフォームCase Studies_4徳田昭雄 副学長

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