カレッジマネジメント230号
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23リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021ことで大きな価値になる。こうした「実践知」を立命館の軸足に、学園の将来像を描いていくという。立命館がこうした動きを加速する理由がもう1つある。「日本は失敗を許さない文化が根強く、PoC(Proof of Concept:実証実験)ばかりで実装が少ない。でもそれでは社会課題は解決せず、アントレプレナーシップどころか、叩かれるのを恐れて何もしない人が成功するような歪んだ風潮を助長することになる」と徳田氏は危惧する。それではいずれ、新しい価値創出を担う人がいなくなってしまう。イノベーションを理念とする大学として、そうした危惧は捨て置けない。立命館が掲げるビジョンは「挑戦をもっと自由に」だが、「『SAND BOXりつめい』の中では『失敗をもっと自由に』を掲げたい」と徳田氏は笑う。立命館発のベンチャー企業は2017年度に26社だったところ、2020年度には60社と2.3倍にもなった。2025年には、起業・事業化推進室に関連する企業の価値・評価総額300億円以上を目指すという。社会への価値創出の実践を大学の中長期的な軸に据えた立命館。現在の日本に絶対的に不足するイノベーション人材供給の今後に引き続き注目したい。(文/鹿島 梓)グで移管された。「即時性・即効性がなくても将来性のあるシーズにはきちんと投資して、マネジメントしながら継続性を担保したい」と徳田氏は言う。研究高度化に加え、社会への実装を意識した研究を蓄積していくという。こうした社会への価値創出を強化するに当たり、立命館が重視する指標が2つある。1つは、イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education」による、大学の社会貢献をSDGsの枠組みで評価する「THEインパクトランキング」。もう1つは、高等教育の世界的評価機関Quacquarelli Symonds社によるQS世界大学ランキング。論文業績が色濃く反映されるため、理系中心のBRITZで特に指標とされている。一方で、立命館が目指す次世代研究大学とは、決して理系に閉じた話ではなく、いかに人文社会科学系も含めた研究力を総合的に向上させていくのかは大きな課題だ。「ランキングありきで文理分断せずに、本気の文理融合の研究大学を目指したい。だから、研究から社会実装へのプロセスの中で、理系と文系の先生が同じチームでプロジェクトに当たるようなスキームを構想しています」と徳田氏は言う。テクノロジーとマーケットは離れているため、それぞれに秀でた専門家が協働する図 立命館の起業・事業化推進機能「SAND BOX りつめい」全体像挑戦をもっと自由に2つのランキングを重視し社会課題解決を推進する■一貫教育を活かした起業・事業化支援■教育的価値の創出 ・学部や大学院のプログラムとの連携 ・プログラムの見える化■アントレプレナーマインドの養成と進路・就職への展開■学外、卒業生(RU/APU)と連携■学内外の事業化支援■研究シーズからの起業・事業化の創出 ・学内外の研究プログラムとの連携 ・補助金申請支援■伴走型起業支援プログラム■専門外部機関との連携一貫教育型アントレプレナープログラム(RIMIX)研究シーズ型ベンチャー創出支援プログラム(BRITZ仮称)教員・大学院生・卒業生対象学生・生徒・児童・卒業生対象各種連携企業NPO/NGOVC自治体・行政他大学弁護士・税理士・弁理士・行政書士等学生・生徒・児童卒業生(APU/RU卒業生)附属校・学部・研究科研究センター・分野横断型研究拠点教職員学外リソースグラスルーツ・イノベーション世界と日本の社会課題学園内、産業界、官、卒業生、NPO•NGOから出る様々な地域課題学内リソース2021.6発足起業・事業化推進室起業・事業化支援■登記できる場所、コミュニティ形成の ためのラボ・オフィス等の設置■テーマ設定型ベンチャー創出支援■ビジネスコンテストアドバイザリ・ボードクラウドファンディング学びのコミュニティ集団形成助成金+R校友会未来人財育成奨学金起業・事業化支援P(新)GAPファンド(新)各種外部資金研究費RIMIXファンドベンチャーファンド窓口・情報(DB)バックオフィスの共有・一元化事業化推進コーディネーター起業支援人材ソーシャルデザイナー事  業社会共生価値の創出社会実装収益還元収益還元投資投資教育研究第1特集●大学ブランド 未来の指標

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