カレッジマネジメント230号
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30リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021い込んでしまうところから解放し、「自分もやればできる」と自己肯定感を持たせるのが大学の社会的役割だと思いますね。宮内:さらに文理選択の問題もあります。小学校の時は理科が好きだったのに、高校で君は文系だと言われたから、数学もサイエンスもやらないで進学してしまう。すると食わず嫌いになったりアレルギーを持ってしまう子も出てきます。しかし現代を生きていくうえでは理数的センスが大切。住宅ローンを組むなら積分の概念が必要だし、株で儲けるなら統計が必要です。神田外語大学は語学中心の大学ですが、文系大学でも理数科目も取り入れるべきだと考えています。もうひとつ、最近の入試改革で、記述式問題の話があります。中国では毎年1000万人の受験生が「高考」という全国統一大学入試を受けますが、そこには作文の試験がある。大学受験として作文を訓練している国民だということが重要です。選択式で育つ日本の高校生とは差がついて当たり前です。思考力を育て、この格差を是正するのも大学の役目と思い、リメディアル教育を徹底的に取り組んでいくことも考えています。─昭和女子大学では社会課題を解決するという点ではどのような取り組みをされてきたのでしょうか?坂東:日本では、女性は謙虚で素直で可愛くあるべきと期待されている。「私なんか」と一歩下がってついていく女性のほうが生きやすいけれど、主体的に自己肯定して挑戦しようとする女性は生きにくく、周りからも叩かれると思い込んでいる学生が多いです。こうした思い込みから解放して、「自分はやればできる」「自分には可能性がある」と自信を持てるようにする。こういった日本女性のジェンダー意識の払拭は、女子大学の大きな役割です。そこは、いわゆるブランドが確立している一流校と違った役割だろうと思います。自分を卑下する癖がついてしまっている学生達に、自己肯定感・自己効力感を持たせるためには、大学時代に小さな成功体験を与えることが大事。そのために本学で注力するのがプロジェクト学習です。企業の方にも協力していただいて、社会と関連した様々なプロジェクトに携わる。現実社会と教室の理論の世界は違うということを知り、そのなかで自分に何ができるか模索することを経験させる。女性達を呪いから解き放つことに力を入れたのです。─教育の具体的な戦略はどう置いていますか?坂東:女性には自己肯定感だけでなく、戦う武器も必要だと思っています。もともと男性が作った社会に新参で入る女性は、「私はこれができます」という得意技を持って入っていかなければ評価されない。競合の多い分野に後からのそのそ行っても評価されません。日本の社会が必要としているけれど、まだ供給が十分ではない分野で、能力やスキルがあれば武器になる。それがグローバルに生きる力だと考えています。昭和女子大学では中国の国家重点大学である上海交通大学とのダブルディグリーに47名の学生がチャレンジし、34名の学生が取得しました。テンプル大学ジャパンキャンパスとのダブルディグリー制度も始まりました。語学力だけではありません。今までの日本社会の常識に絡めとられず、新しい価値にチャレンジできるグローバル人材を日本の企業や社会が必要としていますが、供給が絶対的に足りていません。女性にそれができれば、必要とされる人材になれるはずです。30~40年前の英文科の学生たちの夢は、商社員の奥さんになって海外生活をすることでした。今、国際学部の学生には、自分が駐在員になれるように精進しなさい、と言っています。私がオーストラリアのブリスベンの総領事を務めていた1998年頃、企業からの駐在員に女性の方はいらっしゃいませんでした。ところが3年前にお誘いがあってブリスベンで講演をしましたら、女性の駐在員がぽつぽつといたのです。20年経つと変わってきたなと思いました。─宮内先生は神田外語大学に来て、どのような取り組みをされてきましたか?宮内:実は最初、外語大学というカテゴリーにあることは

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