カレッジマネジメント230号
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35リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021抽象的な表現になってしまいます。具体的に何を目指しているかが分からないので、ぜひディプロマポリシーの中に客観的な基準を入れていくべきだと思います。カリキュラムポリシーも、選択の可能性を与えるとか、双方向の学びということが言われていますが、それを具体的にするためには、ゼミを何単位必修とか、反転授業や課題を出す、CEFR B2レベルを目指すといったことをもっと具体的に打ち出すべきかと思います。実際、オンライン授業になってからは、学修成果を意識して、教員がしっかりと課題を出すようになりました。対面授業に戻っても課題レポートを出すなどして、こうしたクオリティはきちんと担保していく。そういった大学側の姿勢が大事だと思います。ただ、マーケティングの観点から、あまりに教育が厳しい大学と評判になると学生募集がうまくいかなくなるのではないかと危惧する方もいます。私は、絶対にそんなことはない、学生は大学でしっかり勉強して、しっかり成長したいと願っていると信じています。そして、それに応える大学であるということが本学最大のブランドなのではないかと思っています。─それぞれ大学の社会的価値を高めていくために、今後どんな取り組みを考えていらっしゃいますか?宮内:「大学のユニバーサル化」という言葉があります。もはや大学を1つの概念で語るのは無理だと思います。大学の存在価値は1つではなく、それぞれの大学にはそれぞれの大学の使命があります。そして、繰り返しになりますが、学生一人ひとりの4年間のデルタをどれだけ最大化するか。これに注力することが我々の社会貢献だと思っています。坂東:まず学部でグローバルに活躍できる人材を養成する。語学だけでなく数理リテラシーを身につけることも不可欠なので、全学科が初年次から履修できるようにしました。それぞれ自分なりの武器を持って社会に送り出すということは変わりません。学生が社会の担い手になることを目指す教育に加え、今これから力を入れなければいけないと思っているのが、社会の方々の学び直しです。コロナ禍でオンライン化が進み、仕事をしながら大学院で勉強しようという人達が顕在化しているので、今年から福祉共創マネジメント、消費者志向経営の2つの社会人経営大学院をスタートさせました。一般的なMBAは色んな大学が手掛けています。本学ができることは何だろうと考えたときに、教育・福祉、食・健康安全マネジメントの学部を活かした経営大学院を目指すことにしました。社会で働いて得た現場の経験と知識を体系化するだけでなく、逆に現場の方達が直面している社会的な課題を大学が取り込んで一緒に解決に取り組む。そういう大学になりたいと思っています。─大学の経営層に向けて、社会から見たときの大学の価値をどうすればいいのか、メッセージをいただければと思います。坂東:日本の大学全体のブランドイメージを上げていくために、ぜひ力を合わせて教育内容を充実させていきましょう。社会から大学に対するイメージを変えていくには、私達が具体的な成果を上げていかなければなりません。18歳人口が減っていく厳しいなかでこそ、社会課題を解決する人材育成をすることで社会からの評価も高くなり、大学も生き残れるのではないかと思います。コストがかかっても中身の充実こそが最大のサバイバル戦略なのだと、大学経営者の方々と共有したいですね。宮内:キーとなるのはオープンイノベーションだと思います。大学それぞれが徹底的に透明度をあげて、何を残し、何をやめるのかを決める。社会に対する価値を創出するには、1校ではできないかもしれない。経営者はもっとフランクに話さなければならない時代になると思います。一緒にやりましょう。さらに、日本だけでは無理です。昭和女子大学とテンプル大学のコミュニケーションは素晴らしいと思います。悲しいかな我が国は外圧がないとなかなか変われないというDNAがあるので、あらゆるソースを使ってオープンイノベーションを進めていく。これに尽きるかなと思っています。大学の中のディスカッションだけでなく、外部に徹底的に透明度の高い競争フィールドを作っていきましょう。(文/木原昌子 撮影/小山昭人)第1特集●大学ブランド 未来の指標

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