リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021今回のリニューアルが目指す方向性は、社会環境が大きく変化していくなかで、大学業界、教育業界の情報にとどまらず、社会変化の兆しをいち早く捉え、より良い大学創りに活かしていただくための情報提供である。リニューアル第1号は、大学のブランド戦略をより本質的に捉え、新たな方向性を考える特集を組んだ。企業のブランド戦略の新たな方向性として、巻頭の寄稿で名和教授が指摘されているようにCSR(Corporate Social Responsibility)からCSV(Creating Shared Value)に移り変わりつつある。それは、企業は社会的な責任を負うとして、得た利益を社会課題解決の取り組みによって社会に還元していくようなボランティア的なもの(CSR)から、本業を通じて自ら市場を創造して社会課題を解決しすることで、その価値(大義)を提唱し、社会からの共感を得る(CSV)戦略への移行である。存在価値を明確化し、強い“志”を持った経営手法である「パーパス経営」という言葉も浸透してきている。いずれも、内発的にビジョンや目的を定め、本業を通じて実践していくことで、コモディティ化する市場に巻き込まれず、独自のポジションを構築していくためのマーケティング戦略である。大学と企業は営利を目的としない点では異なる。しかし、ビジョンや目的を明確にし、本業(教育・研究)を通じて実践していくことで、社会からの共感を得、単なる入学時の偏差値による序列化や、グルーピング(コモディティ化)から脱することができるという点においては、同様な戦略として考えられるのではないだろうか。目的やビジョンに共感する人々が熱い思いをもって、わくわくして集まってくる、それが教育や研究に反映されている。これが、大学の本質的なブランド価値だと私は考えている。事例においては、総合大学、専門大学、地方大学、女子大学それぞれが考える社会課題について、本業を通じて解決しようと取り組んでおり、まさに存在価値として独自のポジションを構築している。座談会では、外部から大学業界に飛び込んだ理事長・学長から、これから必要とされる人材をいかに育成していくか、これこそが社会課題解決であり、大学の競争優位性につながるものだというお話をいただいた。改めて、大学がブランド戦略に取り組み意味を考えてみたい。その本質はShared Value=価値への共感である。価値への共感が、大学のブランド力を構築し、学生募集や中退防止の基盤となっていくのである(図表)。大学のブランド力が向上すると、本学ならではの価値が高まり、理念に共感した志願者が集まる。志願倍率が上昇し、選抜を経て、入学者の質が向上すると効率的な教育投資が可能になる。教育の質が向上すると卒業生の評価が高まり、学生・教職員の満足度・モチベーションが向上して、さらに大学のブランド力は高まる。これを「好循環(ポジティブ・スパイラル)」と呼んでおり、個性が輝き質の高い大学は、競争的36編集長の視点本誌編集長 小林 浩価値や目的への共感が強い大学ブランドを形成するEditor-in-chief’s Perspective本業での価値創造を目指してCSRからCSVへ教育・研究を通じていかなる社会課題を解決するのかブランド力が生み出す大学の「好循環」「悪循環」モデル
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