5リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021日本の大学は、もとより全てが独自性と多様性に富んでいる。独自の理念のもとにつくられ、固有のポリシーを明確にして成り立っており、個々のミッションを果たしてきた。しかし、各大学において「選ばれる存在」となるために、自校ならではの特長や個性を見つめなおし磨くことは、今この生き残りのフェーズにおいて、重要性と緊急性が増している。学習者や、学習者の意思決定に影響を及ぼすあらゆる人や社会から選ばれるために、未来に向けて、どのような視点が必要なのか。その問いに対する一つに、「社会課題解決への関わり」があるのではないだろうか。日本は課題先進国であり、高齢化、少子化、環境エネルギー、経済格差等、世界の国々が今後直面するであろう社会課題にどこよりも早く向き合わざるを得ない。そこに必要となるのは「新たな知」を基盤としたイノベーションである。即ち、大学がこれからの社会において担う役割はますます大きくなることは自明であり、大学を取り巻くあらゆるステークホルダーからの期待が、社会課題の解決という側面にフォーカスされ、信頼の源になろうとしている。大学が、社会に貢献し価値を創造する存在であるとするならば、より深刻化する社会課題を見据え、多様な人材育成や研究、産業界との連携等の中心として存在できるか。それこそがこれからの大学のブランド力の座標軸と言えるのではないか。また一方、学習者にとっての大学は、個人個人の異なる「やりたいこと」や「学びたいこと」に出会う場であり、本来は「自分に合う大学」を選ぶ指標や基準は多様なものである。しかしいうまでもなく、学習者、特に18歳の入学者の選択軸は、学力偏差値以外に依って立つものはほぼないのがこれまでであった。しかし、高校における学びが変わりつつあるなか、探究の時間に代表されるように、生徒自身が世の中を見渡しながら、自分なりに課題を設定し解決に向けて取り組む学習活動が強化されている。そのような学生達は、発芽した課題意識や思考をどれだけ伸ばせる場なのかというモノサシで大学を見て選択することになるだろう。そこで、今回本誌では、「どのような社会課題に対し、どこまで強い志で向き合い解決しているのか」を、未来の大学のブランド軸と捉え、有識者の視点や先進的な大学の事例とともに特集した。
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