カレッジマネジメント230号
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55リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021が始まっている。どれも根底にあるのは各大学の質の良いリソースを共有しようというものだ。1つ目が「共同PBL」。金沢工業大学にはもともと「プロジェクトデザイン」というPBLカリキュラムがあり、4年間で5つのPBL体験が必須科目となっている。1チーム6人で構成され、年間で約300チームが活動することになる。指導教員は30名に上り、多くの成功事例や失敗事例とともにPBLのファシリテーターとしての知見が培われてきた。PBL経験の少ない他大学からすると魅力的なプログラムだ。白山市の金城大学と効果的なPBLを行うためのファシリテート方法について話し合いをしていたことから、実践が始まった。金沢工業大学としても他大学との協働によって、学生に工学的な視点だけでなく、広い視野での問題解決の経験が提供できる。将来的には大学間で単位取得が可能となる仕組みづくりを目指している。「共同PBLのテーマは『金沢市近郊の地方創生』。学生は課題の設定から解決のアプローチまで考えていきます。参加した学生によって取り組むテーマは多様。工学×観光、工学×経済、工学×福祉といった分野の融合はSociety5.0で活躍する人材の育成にもつながると考えています」2つ目がDXによる遠隔授業と単位互換の整備。金沢工業大学が得た文部科学省の教育DXに関する補助金(デジタル活用教育高度化事業「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」)を原資に、100インチディスプレイ2枚を各大学に配置し常時接続する環境の整備を進めている。「スムーススペース」と呼ばれるこの設備は他校の教員がほぼ等身大で映り、リアルな授業に近い環境を実現。2021年9月には私大等PFの3分の2以上の大学に設置が完了する。これによってデータサイエンス基礎、幼児教育、英語教育など各大学の強みとなる授業を共有することができる。3つ目は教養科目の共通授業・単位取得制度の整備。3年後には「国際教養課程」と名付けた教養科目を策定し、各大学で共有することで質の高い授業の提供を目指す。同時に各大学のリソース削減につながることも大きい。スムーススペースのようなDXの環境整備も共通教養科目の学修を後押しすることになる。3つの取り組みと並行して私大等PFではFD、SDも実施。各大学間のノウハウの意見交換は教員の反響も大きく、多くの教員から高いニーズがあったことも分かったという。こういった取り組みの成否は、コンソーシアムやプラットフォームにおける意思決定の在り方にも左右されることは多くの大学が実感しているのではないだろうか。私大等PFでは、3つの会議を設けている(図2)。各大学事務局長レベルの「企画調整委員会」、自治体・産業団体も参加する「運営委員会」、各大学学長・自治体・産業団体の部局長クラスの「意思決定委員会」。この3段階で施策立案の検討・合意プロセスを踏む。最初の「企画調整委員会」は大学だけで構成され、素案を作っているところが私大等PFの特徴だ。実はこの3つの会議の前に「雑談会」が開かれている。「最初は忘年会の飲みニケーションが始まりでした(笑)。今まで隣の大学は何をしているのかも分からなかったのですが、お互いに本音を語り、情報共有することができた。2020年になってオンラインで実施したのが『雑談会』です。議事進行はせず、録画もしません。今日は気楽にしゃべろうよ、という時間にしています。それが新しい施策を生むきっかけになっています」私大等PFの立ち上げのとき、声を上げた金沢工業大学に対し「大学の統合を意図しているのか」という声も出たそうだ。今はそれぞれの大学が、共通化できるところはスリム化し、質の高いものだけを残していくという認識を共有し、同じ未来を見据えている。(文/木原昌子)形骸化しない運営のための組織づくり大学が単独主義、自前主義の教育研究から進化し、新しい価値を模索する挑戦が始まっている。本連載では、事例とともに大学間や高等教育を取り巻くステイクホルダーとの連携、協働の成功のヒントを探っていく。図2 私大等PFの意思決定体制具体的な施策は大学レベルから提案し、自治体・産業界の協力を得ながら決定していく。大学がイニシアティブを取った体制である点が特徴的。将来的には自治体・産業界からのニーズも相互に受け入れる体制を目指す。各大学学長+自治体・産業界の部局長各大学事務局長・担当者各大学事務レベル各自治体・産業界担当者+各大学事務局長・担当者施策の決定・合意施策案の具体化に向けた検討施策案の取りまとめ・素案作成意思決定委員会 年2回運営委員会 年3〜4回企画調整委員会1カ月半ごと雑談会

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