カレッジマネジメント230号
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リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021ことができるとしている。これが不明確だと、当人は与えられた仕事や処遇に漠然とした不満を抱きがちになり、経営的立場からは本人に何を期待し、そのキャリア開発をどう支援するかを曖昧にしたまま仕事を与え続けることになる。2つ目は、判断・行動に際しての考え方である。具体的には、誰のために、何に価値基準を置いて判断し、行動するかということである。企業であれば顧客、大学であれば学生を第一に考え、判断し行動すべきことを多くの構成員が理解しながらも、権力や権威を過度に意識して、本来求められる判断が行えず、行動をとれないという状況はどこにでも見られる光景である。また、多様性(Diversity)、誠実性(Integrity)、透明性(Transparency)といった価値基準は、判断・行動に際してこれまでにも増して重視されるべきである。3つ目は、経験、知識、他者、外部等に対する考え方、つまりこれらに対して開放的か否かということである。新たな事柄に躊躇することなく積極的に取り組む。旺盛な好奇心で新たな知識を獲得する。他者や外部に関心を寄せ、広く学ぼうとする。パーソナリティーの5要素モデル(通称「ビッグ・ファイブ」)の1つ「経験に対する開放性」がこれに相当する。パーソナリティーと捉えるか考え方と捉えるかは別にして、開放性は、仕事の創造性や組織の活力を高める上で、極めて重要な要素である。4つ目は、仕事上の問題を解決するに当たっての考え方である。問題を問題と気づかない、あるいは気づいてもやり過ごすか、進んで問題を発掘し、解決しようとするかは、組織や個人のその後を大きく左右する。取り組むべき問題と認識した場合でも、障害が多く解決困難と考えるか、それらは必ず乗り越えられると考えるかで、解決の速度も結果も異なってくる。問題解決のプロセスでは、問題を構造化し、多面的に捉える、前提を疑い、バイアスを取り除く、筋道立てて考える、辿り着いた結論を客観的かつ批判的に検証するといった要素が重要になってくる。これらは思考法という技能の一要素でもあるが、進んで問題を発掘し、解決しようと試みるからこそ、これらの思考を身につけることができ、また、思考を重ねることで、次の問題に挑む意欲も湧いてくるという側面もあり、本稿で論じる「考え方」に含めることにした。最後は、プロフェッショナルとしての自覚と他者との協働に対する考え方である。仕事で報酬を得る以上、それぞれがプロフェッショナルとして責任を果たすことは当然であり、その自覚を強く持つことが不可欠である。その上で、部署や専門の違い、職種や役職の違い、性別・60大学を強くする「大学経営改革」Innovating University Managementプロフェッショナルとしての自覚と相互尊重組織目的(社会的存在価値)組織文化人の判断・行動・協働考え方知識・技能組織の主体は「人」人ビジョン 戦略組織構造 制度持続可能な組織づくりのフレームワーク

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