カレッジマネジメント230号
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61リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021れている。学校創立の理念や精神を受け継ぎ、発展させることで、学生のみならず教職員のアイデンティティの基盤となる組織文化を形成することは十分可能である。企業でも事業所や部署の単位で固有の組織文化が生まれることがあるように、大学の場合も、学部・学科、または教室・研究室のレベルで独自の文化が形成され、それが教育・研究の卓越性に繋がる事例もあると考えている。教員と職員が一体となって運営する研究所やセンター、事務局や部・課においても、優れたリーダーが組織を率いた後、その考え方が受け継がれることで、固有の文化が形成される可能性もある。このような視点から自校の組織を見つめ直してみることも大切である。持続可能な組織づくりの枠組みを示したものが前ページの図である。本稿では、知識・技能は除き、考え方と組織文化を取りあげ、形なきものの重視について述べてきた。望ましい考え方や組織文化を根づかせるために最も重要なことは、トップが強い信念を持ち、語り続け、自ら実践することである。そのための一つの方法が言語化である。組織全体で共有する価値や行動指針を簡潔明瞭な言葉で表し、繰り返し伝える。場合によっては人事評価の基準の一つとすることも有効である。その生き方や仕事の仕方を通して、望ましい考え方や組織文化を伝えるロールモデルの存在も大きい。このような人材が見当たらない場合は、研修を通した啓発も重要になる。言うまでもないが、これら形なきものの変革のためには、組織構造や制度など形あるものの改革が必要不可欠である。2つが相互に作用しあい、両輪となって持続可能な組織が築かれていくことを強調し、本稿を括りたい。年齢等の違いを超えて、相互に敬意を払い、欠点よりは持ち味に着目し、批判よりは称賛を心がけて他者と接する。決して容易ではないが、このような考え方を広く根づかせていく必要がある。本稿で取り上げる「形なきもの」のもう1つは「組織文化」である。ロビンス(Stephen P.Robbins)は、「個人にさまざまな人格があるように、組織にもさまざまな性格(文化)がある」とし、組織文化が果たす機能として、1つの組織と別の組織の区別を生み出す、組織のメンバーにアイデンティティの感覚を伝える、個人の興味を超えたもっと大きなものへの関与を促進する、社会システムの安定性を強化する、従業員の態度や行動を形成しガイドする管理と意味づけのメカニズムとなる、の5つを挙げる。組織文化に良し悪しはないものの、「やってみなはれ」に象徴されるサントリーの新たな挑戦を尊ぶ文化が同社の発展を後押ししたように、良い方向に作用することは多い。その一方で、悪影響を与えたり、変化への適応力を低下させたりする可能性もある。ロビンスは、組織文化の変革は難しいとしながらも、不可能ではないとし、倫理的な組織文化や顧客対応型文化の構築について、対策を提案している。また、近年、職場における精神性を重視する組織が増えつつある現状を分析し、これらの組織に見られる文化的特徴として、目的意識が強い、個人の成長を重視する、信頼と開放性、従業員への権限委譲、従業員の感情表現に対する寛容さ、の5つを挙げている。これまでにも増して多様性が重視される今日において、組織文化と多様性の関係をどう考えるかは重要な課題であるが、筆者は多様性の重視を取り入れて組織文化をバージョンアップすべきだと考える。企業と異なり大学に組織文化はそぐわないのではないかとの見方もあるだろう。しかしながら、私立大学には創立者がいる。企業の場合も組織文化の源は創立者といわ【参考文献】塩次喜代明・高橋伸夫・小林敏男『経営管理(新版)』有斐閣,2009スティーブンP.ロビンス(高木晴夫訳)『新版 組織行動のマネジメント』ダイヤモンド社,2009創立の精神を発展させ自校に相応しい組織文化を形成トップが強い信念を持ち、語り続け、自ら実践

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