71リクルート カレッジマネジメント230 │ Oct. - Dec. 2021ここまで解説してきた通り、大学の志願度は社会環境の変化に大きな影響を受ける。しかし、14年間の進学ブランド力調査から見た志願度向上のポイントは、「大学改革の推進」と「高校生に向けた広報戦略」の2点である(図表6参照)。 最も重要なのは、「大学改革の推進」である。志願度が向上している大学改革のポイントは①大学の統合、学部学科の改編、キャンパス移転、新たなプログラムの導入等時代の潮流に合致した大学改革を推進していること。②単年度ではなく、中長期的に改革を進めること③学生の卒業後を見据えた改革の実践である。 もう一つ重要なのが「高校生のとのコミュニケーション(広報)戦略」である。せっかく大学改革を推進しても、肝心の高校生に伝わらなければ意味がない。進学ブランド力調査を分析すると、変えた時ではなく、高校生に伝わったときに初めて志願度が上がる傾向がある。受験生は毎年変わるし、高校生は3年で入れ替わる。当たり前のことなのだが、そのために広報戦略も短期だけではなく、中長期で考えていく必要がある。この2つをしっかりと実践している大学の多くは、着実に志願度が向上している。学部の新設やキャンパスの移転等については、実施した年は広報、メディア、口コミ等の浸透により、ある意味話題性をもって盛り上がるが、この効果は数年と持たない。大学のありたい姿を想定し、そこに向けたビジョンや中期計画の策定を通じて、絶え間ない改革の推進が重要になるのである。社会環境が大きく変化するなか、時代の要請に合致した改革を推進し、その内容を高校生に丁寧にわかりやすく、諦めずに、継続的に伝えていくことによって、大学は着実にブランド力を高め、高校生からの志願度を高めることができるのである。 最後に、大学は教育機関である。そのため、広報戦略は単に改革の事実を伝えるのではなく、その改革が大学の教育や研究、人材育成の目指す方向性やビジョンとどのように連動しているのか、そのメッセージをしっかりと確立し、わかりやすく伝えていくことが、今後ますます重要となってくると考えている。図表6「進学ブランド力調査」結果から見る志願度向上ポイント志願度向上のポイント①大学統合、学部学科新設、キャンパス移転等の改革の実践②短期ではなく、中長期的な改革の推進、広報戦略の実践③卒業後を見据えた進路選択をする傾向が顕著に志願度が上昇している大学のポイントブランド力による「好循環」と「悪循環」モデル教育や研究、人材育成のメッセージとの連動が重要に大学改革の推進高校生に向けた広報戦略変えた時ではなく、高校生に伝わった時に初めて志願度が上がる(広告・宣伝だけでなく、メディア露出や口コミも影響)
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