カレッジマネジメント231号
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11リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022修士課程等、大学で身につけたことと社会の接続が分かりやすい領域では以前から研究等で身についた力が評価対象になることはよくあり、今後、「求人条件を明確にした採用」の普及等でそうした領域が増えていくことを考えると大学にて培われた力が選考により活用される可能性はあります。一方、ポテンシャル重視の「新卒一括採用」では現状大きな変化は見られません。大学ごとに評価の基準が異なるので、活用しにくい」という声をよく聞きます。小林:そこで、外部のアセスメントテスト等も活用して語学力のほか、データ分析力等のリテラシー基礎力や、「課題発見・解決力」「論理的思考力」といった汎用的能力を定量化し、定性情報に加えてポートフォリオにまとめる等、相対化のための工夫をする大学も増えています。増本:汎用的能力については、業界・職種問わず、企業も人物評価において重視しています。入社後のキャリア開発においても恒常的なテーマであり、人事の関心が高いこともあって、評価の観点も時代に合わせて比較的細やかに見直されています。限られた時間の面接で汎用的能力を見極めるのは難しく、適性検査を実施する企業が多いので、汎用的能力の定量情報はその確認材料として活用されるとは思います。ただ、様々な企業の採用担当者の話を聞いていると、ポートフォリオの内容を充実させるだけでは、学修成果は企業にしっかりと伝わらないと感じています。企業が知りたいのは、大学で「何を学んだのか」だけではなく、「学んだことが社会でどう役立つのか」。もっと言えば、「自社でそれをどう生かせる学生なのか」です。その学生が自社でどう活躍してくれるのか、企業がリアルなイメージを描けたときに初めて大学と社会が確かに繋がるのではないでしょうか。その実現のためには、大学での学びを定量化によって見やすくするだけでなく、「翻訳」する機能が必要なのだと思います。例えば、採用担当者が心理学部で行動心理学を学んだ学生の成績評価書を見たとします。心理学は統計学等理系の要素も強い学問で、行動心理学はマーケティングにも生かされている分野ですが、日本では一般に文系として扱われ、臨床心理学の印象を持つ人が多いので、書面の履修科目名を自社の事業と結びつけて評価できる採用担当者は少ないと思います。でも、「統計のゼミに所属し、ベイズ統計学を使って解析したデータをもとにリサーチ会社と新商品開発を手伝った経験がある」と聞けば、どうでしょう。図4 企業の採用活動開始前の「情報分析」「人事戦略」「採用計画」「採用プロセス設計」の実施状況母集団形成、選考、内定など採用プロセスごとに指標や行動計画を設計している採用活動において自社が求める人材要件を 社内で共通言語化し設定している採用活動において社内で共通の選抜基準を社内で共通言語化して設定している採用活動において自社の社風・風土・文化を社内で共通言語化し整理している企業の経営戦略に基づいた採用戦略を策定している社外の機関が提供する採用関連の調査結果を確認している あてはまる・計 どちらともいえないあてはまらない・計経営戦略に基づいた採用戦略の策定を実施している企業は約6割企業の採用準備状況 ※新卒採用実施または実施予定企業/単一回答企業 (%)①情報分析②人事戦略③採用計画④採用プロセス設計68.057.548.236.845.948.830.021.230.523.634.928.231.919.928.414.118.813.2採用活動において、自社が求める人材要件や「社内で共通の選考基準」を言語化して社内共有している企業の割合は、ほかの項目に比べて小さい。リクルート『就職白書2021』School to Workこれからの就職を俯瞰する第1特集

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