カレッジマネジメント231号
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13リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022用」や「スカウト型採用」の広まりについて先ほどお話を伺いました。そうした新卒採用市場の変化に対応するために大学が取り組むべき課題について、考えを聞かせてください。増本:直接的な就職支援については、「プロダクトアウト型」から「マーケットイン型」への転換が課題だと感じています。大学の方々にはもっと社会に出て、産業界がどんな人材を求め、どういう人材が活躍しているかを肌で感じ、インターンシップ等の機会から対話をすることが重要だと思います。もちろん既に様々な取り組みによって情報収集をされていると思いますが、社会や企業が評価する人材像やスキルセットは常に変わります。大学がその変化に追いつけず、企業の期待とのギャップが生じないようにする必要があります。加えて、企業側が気づかない発見を促すことも期待されます。小林:キャッチアップのスピードを上げるには?増本:大学側が積極的に情報を取りに行くだけでなく、既にお話ししたように企業が「求める人材像」を言語化し、適切に情報開示できるかどうかが要だと思います。一つ事例をご紹介しますと、とある企業では2016年秋から、選考が始まる前に「選考解説スペシャルセミナー」を実施。応募者の大学別応募人数、適性検査の合格基準点等あらゆるデータを開示するほか、エントリーシート(ES)の設問やその意図、面接の評価基準まで説明しています。その結果、セミナー受講者のES通過率が未受講者に比べて2〜3倍高くなったと聞いています。つまり、企業の適切な情報開示が学生のアウトプットの質を高めたわけです。そうは言っても、企業の情報開示のあり方を大学側がコントロールすることはできません。この事例を通して、もう一つお伝えしたいのは、企業が求める人材像への学生の理解が深まると、大学での学びが社会にどうつながるかをリアルに意識できるということ。ですから、実践型インターンシップや、企業と共同の商品開発といった、理論と実践が組み合わさり、社会で活躍するために必要な能力を学生が肌で感じられる場には大きな意味があると思います。また、そうした場は企業が大学の学びをつぶさに知る絶好の機会でもあります。企業から「インターンシップに参加した学生から、大学で取り組んでいる最新の研究内容を聞き、社員が刺激を受けた」といったお話を聞いたこともあります。小林:大学と企業がお互いを理解する場を一緒に作り上げていければ理想的ですね。最後に、一人ひとりの学生の社会での活躍を支援するために、大学が最も重視すべきことは何だと考えますか?増本:それぞれの大学が「どんな人材を育てたいのか」を社会とのつながりの中で突き詰め、そのことによって学びの「解像度」を上げることだと思います。社会のどのような領域で活躍する人材を世に送りだしたいのか。「領域」の設定や具体像が明確であるほど大学の学びが特徴のあるものとなり、世の中の人々が「あの大学の学生なら、こんな活躍をするだろう」と具体的にイメージしやすくなります。 また、3つのポリシーの策定・公表が義務化されていますが、大学が「どんな人材を社会に送り出したいのか」というディプロマポリシーを分かりやすく伝えることは、やはり大きな意味があります。社会に対する「約束」を明示し、果たし、信頼性を高める。それこそが最大の学生支援だと思います。(文/泉 彩子)※1リクルート『就職活動中間調査2022年卒』より※2リクルート『働きたい組織の特徴 2021年卒』より※3リクルート『2021年卒(大学生・大学院生)の採用活動振り返り調査』 大学と企業が「場」を一緒に作り上げていくのが理想的(小林)大学が社会に対する「約束」を明示することには大きな意義がある(増本)School to Workこれからの就職を俯瞰する第1特集

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