15リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022針もあり組合活動が活発になり、それを契機に徐々に解雇が難しくなっていった。企業としても、労働争議を避け安定的に人材を確保する、という観点から、それを徐々に受け入れていったように思える。戦後しばらくは就職が難しかったこともあり、解雇が制限されつつある中、中途退社・中途入社は起きにくくなり、長期雇用が習慣化していった。このように、もともと人材が外部流出しない傾向があるなかで、優秀な社員に関しては社内で相対的に良い取り扱いを受けるため、外に出る可能性はさらに低くなる。結果として、中途採用市場が質量ともに発展しなかったと言える。そこで、質量ともに優秀な人材を確保することができる事実上唯一の機会であり一期一会の機会、即ち、新卒採用が重要性を増したのだ。雇用保障という文脈の中で、新卒一括採用が人材確保の中心的な役割を占めると何が起こるのだろう。長きにわたり既に起きていることだが、採用タイミングがどんどん早くなる。その理由は、トップクラスの人気を保持する企業以外は一般的に先に動いたほうが得だからだ。先に内定を出せば、同じ程度の志望度の企業を受けなくなるかもしれないし、より志望度が高い企業がある場合でも、内定者に働きかけることで自社への志望度を高め、他社を第一志望としていた優秀な学生を獲得できる可能性もある。ここで後手に回ると接触をすることもできなくなるため、原則として先にコンタクトしたほうが有利になる。その結果、長期的トレンドとして採用活動は早まり続け、現在、採用活動が早い企業群は3年生の夏休みから新卒採用を開始する。このような環境下で、新卒採用が人材確保の生命線を握るメンバーシップ型雇用の企業は当然のこと、ジョブ型雇用を採用している企業ですら、周囲との競争に勝つために新卒採用の早期化を加速せざるを得なくなっている。日本においては中途採用の労働市場が未成熟であるため、ジョブ型雇用の企業においても新卒採用は非常に重要であり、新卒採用早期化が必要なのだ。新卒採用はいわゆる大量採用であるがゆえに、効率を考え採用活動時期も入社タイミングもできるだけ一時に合わせる傾向が出る。雇用保障に加えてもう一つのメンバーシップ型雇用の肝である“会社裁量による異動・転勤”も日本企業の新卒採用活動を特徴づける。即ち、採用された学生の入社後の配置や担当業務は予め決定されない。どんな仕事をするのか分からないので、職種別採用でなく、職種を区分しない一つのプールとして一括採用することが多いのだ。これらの、「入社後の職種を特定しない」「卒業タイミングより相当程度前に採用活動が行われる」という新卒採用の特徴は、大学にも大きな影響を与えてきた。大学の専門教育のレベルが就職に直接的に影響しにくい構造ができどんどん早くなる新卒採用入試偏差値が高ければ就職に有利School to Workこれからの就職を俯瞰する第1特集
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