16リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022近年のデジタル人材の輩出に関する国内・国外の大学における対応の差は、産業界の要望に国内の大学群が積極的に反応していないという傍証の一つとなるだろう。例えば、需要が大きなデジタル人材の中でも、近年特に企業が重視している職種の一つとしてData Analystがあげられる。Webで検索すると一目瞭然だが、日本のトップ校でそれに類する学科やコースを設けているケースは多くない。従来の学部、学科体系の中で一部の教授が手掛けているくらいである。一方、海外に目を向けると、多くのトップ校で既に当該専門領域に関する学科やコースが設定されていることが良く分かる。これは、産業界からある特定のスキルや職種が求められると、その要請に応じて大学教育の内容を素早く変化させていることを垣間見ることができる事実だ。日本では出口(就職)と教育内容の関係が強くないため、このようなことに感度が低くなりがちであるが、海外の大学は、企業サイドの教育ニーズに応えることが就職に直結し、大学の評判、ひいては経営状況につながる構造があるのではないか。上がったのだ。職種別採用でないため、企業側の採用基準は、具体的に何かを知っていたりできることではなく、地頭が良くロジカルシンキングに優れる、リーダーシップや協調性がある、柔軟性があり素早く学ぶことができる、等の基礎的な能力やパーソナリティーになる。これらの能力は大学で鍛えられる部分はあるが、大学の専門教育と直接的な関係は低い。となると、面接でこれらの基礎能力レベルやパーソナリティーを最終的に判断するにしても、これらの基礎能力とある程度相関関係があるように思える大学入試時の学力、すなわち、入試偏差値(≒大学名)で一定程度スクリーニングする、という現在新卒採用で良く行われている慣行に行き着く。就職という観点で、学生から大学を見ると、就職の成功に関係するのは入試の難しさ(≒大学名)であり、大学の専門教育のレベルではないのだ。故に、学生はより偏差値が高く良いとされる大学に入学したがる。また、企業としても業務に適合した専門能力は無い前提での採用のため、大学の専門教育にあまり多くを期待しない。そんな状況が長年にわたり続いており、大学教育に対する変革やレベルアップへの産業界からの圧力は恒常的に低かったといえる。図 メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いデジタル人材の輩出量が増えない就職を良くするために大学が行うべきこと入試難易度の向上企業が大学に直接的に求めるもの基礎能力が高い学生のスクリーニング・プール新卒採用で企業が候補者に求めるもの基礎能力典型的な新卒採用の手法一括採用(配置に制限はない)メンバーシップ型雇用ジョブ型雇用職種別採用(職種別に配置する)専門能力企業が求める専門能力を持つ卒業生の輩出専門教育能力の向上
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