カレッジマネジメント231号
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18リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022理系学生の就職や採用に関して、今、何が課題となっていて、それに対してどのような動きがあるのだろうか。理系学生に特化してそれぞれの研究内容に関する独自のデータベースを作成し、企業が自社の求める専門性を持つ学生を検索してアプローチできるスカウトサービス「LabBase」を運営する株式会社POLの代表取締役CEO、加茂倫明氏に話を聞いた。理系の新卒採用においては、大手企業を中心に「修士以上」が条件とされているケースが多い。そのため、文系学部と比較すると遥かに大学院進学率が高く、理学部や工学部等の学生は、平均すれば4割程度、国立大学や私立上位層の大学に限定すれば6~9割が修士に進学している。修士課程や博士課程で研究に取り組んできた大学院生は、当然ながら研究対象となる分野に関して一定の専門性を持っており、企業にとってもそれは魅力であるはずだ。しかし、現状の新卒一括採用システムの下では、個々の学生が持つ専門性と、企業が求める専門性とのマッチングが十分に実現できていないことに課題があると加茂氏は指摘する。「大学院での研究はピンポイントのテーマに取り組むことが多いため、それをそのまま就職後の業務で活かせるケースは現状では少ないです。では、企業側はどのような観点で学生の専門性を評価しているかというと、その分野に関する素養であるとか、研究を通して獲得した問題解決能力、論理的思考力を見ていることが多いですね。新卒一括採用の下では、このように求める専門性の抽象度を高くせざるを得ず、ざっくり網を掛けるような採用になっているのが現実です。そうなると、学生が研究を通して身につけた専門性と企業、特に現場が求める専門性とのマッチングの精度はどうしても低くなってしまいます。この課題は以前からあり、今も全体的に見れば、状況が大きく変わっているとはいえません」。ただし、今、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行を志向する企業が増えている中で、一部の職種の採用においては明確な変化も起きているという。「今、多くの企業にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)は喫緊の課題ですが、対応できる人材はまだインタビュー産学連携の人材育成を実現するためのプログラムの開発・整備や、個別の研究室の研究内容に関する企業に向けた情報発信等が求められる理系学生の就職・採用の新たなスキーム専門性のマッチングに大きな課題があるAI、DS等の分野以外でも、新たなジョブ型採用が進む可能性はある灘中学校灘高等学校卒業。東京大学工学部3年休学中。 高校時代から起業を志し、国内外3社での長期インターンを経て、2016年9月に株式会社POLを創業。株式会社POLは、主に理系の大学院生を対象としたスカウトサービス「LabBase」を運営。登録している学生数は2023年卒の学部3年・修士1年合計で1万4000人以上(累計4万人以上)。導入企業数は400社以上。加茂倫明氏株式会社POL 代表取締役CEOInterview

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