19リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022まだ少ない。そのため、ここ2~3年の動きとして、データサイエンス、AI等の情報系の分野に関しては、枠を設けて、ジョブ型採用を導入する企業が増えています。その場合は、企業側も大学院での研究内容を評価しますし、高度な専門性を持つ学生を年収1000万円で採用する企業等も出てきています。学生も大学院で研究してきたことを直接業務に活かせますから、専門性のマッチングがうまくいっているケースといえます」。このように、あくまで分野限定でジョブ型採用が動き始めているというのが現状だが、この流れは他の部門・職種にも波及していくのだろうか。加茂氏は、様々な課題はあるものの、情報系以外の理系分野でも、今後はジョブ型採用が加速していく可能性は十分あるという。「大学の研究室における研究も、企業の現場における研究開発も“ニッチの集合体”です。学生が大学院での研究を活かせる職場も、企業の現場が求めるピンポイントの専門性を持った学生も、それぞれ丹念に探せば見つかる可能性はあるのです。しかし、企業側は、人事部を主体とした採用活動に個々の現場のニーズを反映し切れていない傾向があります。人事部は、機械系の採用でも、情報系の採用でも一括して同じメッセージを発信していますから、学生は就職後の仕事を具体的にイメージしづらい。また、学生側も、現状では自分が取り組んだ研究に関して整理して提示する手段も機会もないので、マッチングがうまくいかないのです。このニッチとニッチがダイレクトに合致することは少なくても、ある程度近い領域同士で結びつけていくことは十分可能で、そのようなジョブ型採用の新たなスキームが浸透していけば、よりマッチングの精度を高めていくことはできます。当社のスカウトサービスもまさにそこを志向しています」。企業にとっては、個々の現場が必要としている人材を効率的に採用するためには、ジョブ型採用の導入は合理的な選択だ。しかし、欧米のようなジョブ型雇用への完全な移行は、組織全体の大改革を必要とするうえ、日本人の国民性やもともと日本企業が持っている強みとはなじまない面もあるといわれている。つまり、多くの企業にとっては、従来のメンバーシップ型も残しつつ、ジョブ型とのハイブリッドをいかに図っていくかが現実的な課題。既存社員を含む組織改革は難しい舵取りが必要となるため、今後どのようなペースでジョブ型雇用が拡大していくかは不透明な面もある。しかし、専門性が明確な理系の新卒採用に関しては、比較的ジョブ型への移行は進めやすいだろうと加茂氏は見ている。では、学生側は大学院で獲得した専門性を仕事に活かすことに関してどのように考えているのだろうか。LabBaseがHR総研と共同で行った「2022年卒理系院生の就職活動動向調査(2021年1月)」によると、「仕事内容に自身の専門性を活用することの重要度」に関して、「重要である」「やや重要である」と回答した学生は、合計で74%に上る(図1)。また、「活かしたい専門性の内容」については、「これまでに培ったPCスキルや論理的思考力等を活かしたい」が37%と最も多いが、「学部や大学院での専攻で培った知識を活かしたい」(32%)、「研究活動で培った知識や経験を概ねそのまま活かしたい」(19%)との回答も一定数に上っている(図2)。このように、PCスキルや論理的思考等、汎用性の高い力のみならず、自身が取り組んできた学びや研究に関する個別性の高い専門性を仕事にも活かしていきたいと考える学生も決して少なくない。つまり、ピンポイントのマッチングに対するニーズは企業大学の研究も企業の研究開発も“ニッチの集合体”学生も仕事への専門性の活用を重視School to Workこれからの就職を俯瞰する第1特集
元のページ ../index.html#19