カレッジマネジメント231号
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20リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022のみならず、学生の側にもあることが分わかる。ところで、理系の学生の就職の主たるチャネルとしては学校推薦制度をイメージする人も多いだろう。教授が研究室に所属する学生を企業に推薦する推薦制度は、ある程度精度の高いマッチングを実現できる仕組みではある。しかし、トヨタ自動車が、2020年に技術系新卒採用での学校推薦を廃止したことを受けて、POLが理系人材の採用を担当する人事を対象に実施した調査によると、同制度は明らかにダウントレンドにある。図3に示したように、既に59.6%の企業が、「推薦制度を利用していない」と回答。また、実施している企業に関して、応募人数の増減を尋ねたところ(図4)、「変化していない」が47.5%と最も多いが、「3年ほど前から増加している」との回答は12.5%にとどまり、「減少している」との回答が合計で40.0%に上った。「推薦制度は、学生にとっては、就職活動に時間や労力をかけずに就職できるというメリットがあります。また、企業も、既に採用実績がある研究室の学生であれば、学生の専門性が分かるのでマッチングの精度を高めやすいですし、研究室とのパイプも構築できます。一方で、学生にとってはデメリットもあります。推薦を受けた以上、大学や教授と企業との関係もあって辞退しづらいですし、推薦先はどうしても大学や教授とつながりがある企業に限られますから、魅力的な新興企業等が選択肢に入らなくなる。そのため、推薦制度に頼らない学生が増えているというのが現状です」。主体的に就職やキャリアを考える学生が学校推薦制度を敬遠するようになると、企業にとっても同制度は魅力的なチャネルではなくなってくる。多様な学生を採用するという観点からも、採用における推薦制度への依存度は今後も低下していく可能性が高いと見られる。こうした背景もあり、前述のようにマッチングのための新たなチャネルの拡大が求められるようになるわけだが、ここで企業側にとって重要になるのが、採用における現場の関与度を高めることだと加茂氏は指摘する。「企業の採用には『アトラクト』と『見極め』という2つの重要でない3%あまり重要でない9%どちらとも言えない13%やや重要である49%重要である25%その他専門性や理系の特徴を活かしたいと思わない明確なイメージはなく理系であることを活かしたい研究活動で培った知識や経験を概ねそのまま活かしたい学部や大学院での専攻で培った知識を活かしたいこれまでに培ったPCスキルや論理的思考力等を活かしたい373219831(%)図1 仕事内容に自身の専門性を活用することの重要度図2 活かしたい専門性の内容出典:【HR総研×LabBase】2022年卒理系院生の就職活動動向調査(2021年1月)(ProFuture株式会社/HR総研)出典:【HR総研×LabBase】2022年卒理系院生の就職活動動向調査(2021年1月)(ProFuture株式会社/HR総研)ダウントレンドにある学校推薦制度企業は採用への現場の関与が重要に

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