22リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022学生の就職活動において、これまで面接では「ガクチカ」といわれる、サークル活動やアルバイト、ボランティア等、学業以外の活動が重視される傾向が強かった。しかし、コロナ禍で学生の課外活動の機会は激減。「面接でアピールする材料がない」と就活生が嘆いているといった報道等も話題となった。一方、コロナ禍とは関係なく、学業が本分であるはずの学生の評価軸が課外活動に偏重していることには、以前から疑問視する声はあった。こうした課題感の下、大学側がシラバスの厳密化や学修成果の可視化等に取り組むなかで、企業側にも学生の学業行動に目を向ける動きが生まれ始めている。履修データセンターが事業展開している「履修履歴データベース」は、企業が学業行動に基づいて学生を評価する取り組みを支援するサービス。学生の大学における履修履歴を全大学共通のフォーマットで示し、それに基づいて面接する手法を提案するこのサービスは、今、企業からの関心を集めつつある。このような動きは今後本流となっていくのだろうか。履修データセンターの代表取締役である辻 太一朗氏に話を聞いた。「一つ注意していただきたいのは、企業が学業行動に目を向け始めたといっても、決してGPAをそのまま評価する企業が増えてきているわけではないということです。今も昔もGPAが優れているからそれだけで面接する、採用するという企業はほぼありません。なぜかというと、理由はいくつもあるのですが、一番は、大学側の学生への評価に対する信頼がないからです」。この場合の評価には2つのポイントがあると辻氏は指摘する。1つは、何を評価しているかということ。企業は、特定の専門職でもなければ、それぞれの科目で得られる知識量はそれほど重視しないことが多い。採用側にとって重要なのは、その知識を得る過程でどのような努力・工夫ができて、その結果として、物事を考えたり、深掘りしたり、表現したりする知的水準がどのレベルにまで到達しているかであって、現状のGPAがそれらの点を的確に反映できているのかが疑問視されているというのだ。大学側には、評価項目を明確にし、先に挙げたような観点を評価していこうとする動きも一部にはあるが、少なくとも企業側には伝わっていないのが現状だ。もう1つのポイントはその評価が厳正に行われているかということ。厳正な相対評価に取り組んでいる大学もインタビュー評価基準の明確化や評価の厳正化GPAの信頼性をいかに高めるかが大学の課題「ガクチカ」から「学業行動」へ変わりつつある企業の学生評価コロナ禍で「ガクチカ」が語れない状況に企業はGPAを評価しているわけではないInterview1959年生まれ。リクルートで採用責任者として活躍後アイジャストを創業。LMIと資本統合後、同社取締役に就任。2011年NPO法人DSS、履修データセンターを設立。著書に『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』等がある。辻 太一朗氏(株)履修データセンター 代表取締役
元のページ ../index.html#22