カレッジマネジメント231号
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23リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022なかにはあるが、そうでない大学も多い現状では、GPAは客観的指標にはなり得ないという。この辻氏の指摘は、現状のGPA制度が抱える大きな課題だ。図表1に示したように、GPA制度そのものは年々導入が進み、今やほとんどの大学が採用している。しかし、2018年度時点の「GPAの平均値や分布状況に関する公表状況」をみると、GPAに関する情報公開は決して進んでいるとはいえない。大学全体のGPAの平均値や分布状況を公表している割合は7.6%、学部または学科に関しては17.2%、教員または授業科目に関しては5.9%にとどまっている。仮に採用側が「この大学・学部の高いGPAにどれだけの価値があるのか」を調べようと思っても、そこがブラックボックスになってしまっている大学があまりにも多いのだ。だとしたら、企業は学業に関して何をどのようにみているのだろうか。「私達が提供する履修履歴データベースを利用する企業が何に注目しているかというと、成績ではなく、学生の学業に対する考え方や価値観、さらに、どのような意図でどのような科目を履修したか、各授業においてどのような行動や努力・工夫をしたかといったことです。今、ここに学生の個性が表れるようになってきているのです。その背景には、シラバスの厳格化によって、学生はきちんと授業に出席しなければ単位が取得できなくなってきたという、ここ3~4年の急激な動きがあります」。出席管理が厳しくなかった数年前までは、学生は授業に出なくても、要領よく定期試験対策をしていれば単位取得できることもあったし、高いGPAを得ることもできた。そのような環境下では、学生は「出席しなくても単位が取れる楽な授業」を選択する傾向が強くなる。それでは、成果としてのGPAが評価の対象にならないどころか、企業は学生の学業に対する取り組みからも学生の資質や能力を測ることができない。学生は学業以外に使える時間が豊富にあるから、サークル活動やアルバイト、ボランティア等の課外活動に力を入れる。そのため、学業よりも課外活動において自分の個性が表れるエピソードが豊富になる。だからこそ、企業は面接でガクチカを重視していたというわけだ。しかし、履修データセンターが就活生を対象にした調査シラバスの厳格化で授業への出席が必須に0200400600私立公立国立私立公立国立2018年度2017年度2016年度2015年度2014年度050100教員または授業科目ごとのGPAの平均値や分布状況学部または学科のGPAの平均値や分布状況 大学全体のGPAの平均値や分布状況 73623134274414901273475677828282735477027353368861522665634946345345257878.2%85.0%90.4%92.5%94.9%7.6%5.9%17.2%GPAの平均値や分布状況に関する公表状況(※)大学院のみを設置する大学は母数に含めない。出典:文部科学省「平成30年度大学改革状況調査」図表1 GPA制度の活用2018年度においては、「GPA制度」は、学部段階で702大学(約95%)が導入されており、その内、学部全体で導入しているのは628大学(約85%)。School to Workこれからの就職を俯瞰する第1特集

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