カレッジマネジメント231号
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25リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022たとして、面接担当者は履修履歴を見れば、『その割には情報系の科目をあまり履修していない』『該当する科目の成績がよくない』といったことが分かりますから、その理由を聞いていけば、学生の話していることが本当かどうか確認できます。『苦手だった』という科目でも、その成績が良ければ、授業でどのような努力をしたのかといった質問もできます。サークル活動やアルバイトでの成果やエピソードはあくまで学生の自己申告に過ぎませんから、そこから学生の特徴を確認するためには掘り下げて質問を重ねていく必要があります。それに対して履修履歴に基づく面接は効率が良く、企業にとってもメリットは大きいのです」。そのため、このスキームは今後拡大していく可能性は十分にあると辻氏は予測する。また、現状ではあまりに軽視されすぎているGPAに関しても、企業は見る目を変えるべきではないかというのが辻氏のもう1つの提言だ。辻氏らのチームは、著書『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』のなかで、履修履歴データベースに登録している私立文系の学生で、各学部のGPA上位5%に属する84人を対象にインタビュー調査を実施した。その結果、「いわゆるガリ勉タイプ」という従来のイメージとは異なるGPA上位学生の特性が浮かび上がってきた(図表2)。GPA上位学生は、「サボり癖がない(自分を律することができる)」という共通の特性に加えて、「目的に向けて行動できる」「知的好奇心、学びへの期待が高い」「責任感、当事者意識がある」「負けず嫌い」「地頭が良い」「継続的努力ができる」「エネルギーレベルが高い」「もったいない・無駄にしたくないという意識が強い」のいずれか1つ以上を兼ね備えていることが明らかになったという。これらはまさに企業が学生に求めている資質や力であり、それが結果として表れている以上、シラバス厳格化以前のイメージでGPAを企業が軽視している状況は、あまりにもったいないといえるだろう。一方、大学側には、GPAの評価基準の明確化や評価の厳正化に関する取り組みを通して、GPAの客観的信頼度を高める努力が求められる。図表3に示したように、全ての科目の評価基準をシラバスに明示している大学は既に98.4%に上っているが、今後は、企業との連携も図りながら、評価基準の精査、見直し等を進めていくことが必要だろう。同時に相対評価の徹底、GPAの平均値や分布状況に関する情報公開を積極的に進めることも重要になる。(文/伊藤 敬太郎)「GPA上位者はガリ弁タイプ」ではない図表3 成績評価の状況私立公立国立1000200300400500600700全ての科目をシラバスにより明示050100150一部の科目をルーブリックにより明示全ての科目をルーブリックにより明示 一部の科目をシラバスにより明示 2014201820142018201420182014201881811056312361913919454562431381117815262642825657287855271196.2%98.4%5.7%2.0%2.3%5.1%8.4%26.2%【学部段階】 成績評価基準の明示方法(大学数)(※)大学院のみを設置する大学は母数に含めない。School to Workこれからの就職を俯瞰する第1特集

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