カレッジマネジメント231号
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27リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022主流だという。そして、一連の流れにおいては「単に就業体験をするだけではなく、学生の学びの質を担保することに注意を払っている」と黒坂学長は話す。これは、段階を踏んでインターンシップに至るカリキュラム構成だけでなく、インターンシップ科目内での丁寧な事前学習や企業との密な連携にも表れている。例えば「インターンシップ3」では、事前学習として90分14コマかけて目標の設定や実習先企業の研究等を行う。また、キャリア教育センターのインターンシップ専門人材2名が中心となり、企業、学生、教員の3者をコーディネートしてプログラムをまとめるとともに、学生約200名を企業に送り出す8月〜9月上旬には、受け入れ企業のうち約40社を訪問して学生の活動状況を把握する。現地で得た情報を科目担当教員と共有して事後学習の際に学生へフィードバックしてもらう体制も作っている。「実習中も企業に丸投げせず、大学と企業が連携して実習を遂行するのも、教育型インターンシップとしてのこだわり」と松本氏は話す。資格取得学部の実習さながらの体制だ。加えて、キャリア教育センターの担当職員が毎年秋に全国約240社を訪問して次年度の受け入れを依頼。承諾を得られた約170社のうち学生とのマッチングから漏れた企業には改めてお詫びに訪問する等、face to faceで信頼関係を築いている。「職員による関係構築はもちろんのこと、学生ならではの視点やアイデアを期待する企業様にきちんと応えられるプログラムを我々が作り、学生が責任感を持って現場に入るというwin-winの関係ができていることが、協力を続けて下さる理由の一つになっていると思う」と植原氏は話す。開始から20年を超え、定量的な成果も見えてきている。例えば、PBL系科目「O/OCF-PBL」受講者の卒業後調査から、仕事の満足度の要因が給料や職場環境等の外部要因ではなく、自己の仕事観にある人の割合が高いことが分かっている。黒坂学長は「本学のキャリア教育が長い人生における資産になっていると感じる」と評価する。また、キャリア教育で重視している指標ではないが、就職活動において、非受講者に比べて受講者は進路が決定している割合が高く、内定獲得時期も早いという結果も出ている。今後の展開としては、「専門教育におけるキャリア教育の推進」「体育会等、まだキャリア教育が十分に行き届いていない学生を対象としたキャリア教育プログラムの浸透」「低年次向けインターンシップの充実」の3つを黒坂学長は挙げる。専門教育におけるキャリア教育は、情報理工学部と生命科学部が取り組む「理工系コーオプ教育プログラム」が2021年日本インターンシップ学会第4回槇本記念賞において「秀逸な事例」に選定される等、3分の2の学部・学科が濃淡の差はあれど専門教育とコーオプ教育の協働に取り組んでいる。これらをさらに充実させていくという。「学生を教室にとどめ、座学だけで専門知識を与えれば十分と考えて学生を社会に送り出すのは間違い。人間的な成長を促し、社会を生き抜く力を育むことに、キャリア教育、そして大学の役割がある。今後もキャリア教育をさらに広げて、School to Workを実現させていきたい」と黒坂学長は意気込む。京産大のコーオプ教育のさらなる進化に期待が膨らむ。(文/浅田夕香)仕事の満足度が自己の仕事観に起因する受講経験者科目名1年次2年次3年次4年次春学期秋学期春学期秋学期春学期秋学期春学期秋学期導入・接続教育科目群自己発見と大学生活ファシリテーション入門キャリア・Re-デザイン産学協働教育科目群キャリアデザイン系理工系スタートアップ・キャリアデザイン自己発見とキャリアデザイン働き方の未来PBL系O/OCF-PBL 1 O/OCF-PBL 2 企業人と学生のハイブリッドインターンシップ系スタートアップ・インターンシッププレップ・インターンシップアスリートインターンシップインターンシップ 1インターンシップ 2インターンシップ 3インターンシップ 4インターンシップ 5図 キャリア形成支援プログラム概観※O/OCF-PBL(オーシフピービ―エル):On/O Campus Fusion-Project Based Learning:課題解決活動を通じて実社会で必要となる心構えや能力を身につけるために設定されたPBL科目School to Workこれからの就職を俯瞰する第1特集

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