29リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022目的で独自設計したもので、当時、検討組織委員会の委員長を務めていた河合学長が全学展開をけん引した。学生による自己評価ツールのため、学生に対する入力促進が肝でもある。現在は、まず入学直後のガイダンス期間に31項目について自己評価と、今後の学修や活動の計画立案に取り組んでもらいながら在学中の継続活用を促し、その後、2年次後半から3年次にゼミや研究室に入る段階と、3年次の就職ガイダンスにおいて入力を促すという。コロナ禍もあって、利用の仕方・され方にはばらつきがあるが、「例えば、半年間のゼミの各回の授業計画を教員が示し、それに対する向き合い方を学生に入力させる機会を作り、実施後に学生が自己評価できるようにしている学部もあります」と河合学長は話す。今後の展開について聞くと、「学生の諸活動をより積極的に可視化し、それをどう教育に活用していくかがテーマになる」と河合学長は言う。今取り組んでいるのは、「C-compass」のコンセプトを維持しながら、学びや経験を統合的に見ることができる学生ポートフォリオにリデザインすることだ。担当部署として2021年4月に立ち上げられた教育力研究開発機構の機構長も務める佐藤副学長は、「行動特性や学業成績、スポーツ活動や文化的活動の成果等を統合的に表示して、学生がトータルで自身をメタ認知できる仕組み、加えて教員も学生本人の同意のもとにその情報の開示を受け、それに基づいて指導ができる仕組みを、成績評価とは別に作っていきたい」と意気込む。2021年度からは、学部横断教育を担う全学連携教育機構が、AI・データサイエンス全学プログラム等を対象に、活動の成果を可視化できる技術・オープンバッジへの実証実験を行っている。「その成果も含め、多くの工夫をして、2025年頃を目処に学生ポートフォリオとしてまとめる仕組みをリリースしたい」と佐藤副学長は話す。また、より多くの学生への活用促進にも取り組んでいく。「入学生の大学生活に対する意欲は多様で、『受かった大学がここだったから』と意欲の低い学生もいる。そういった学生も適切に支援していくために、学部学科・ゼミ・クラスといった細かいメッシュで、自分のキャリア形成を軸にしたツール利活用を推進する仕組みを整えていきたい」と河合学長は話す。一方、こうした学習成果の可視化の動きには、「企業側が受け止める仕組みが不可欠」と佐藤副学長は課題感を示す。「学生がポートフォリオを示して自らの特性をアピールした際に、きちんと評価してくださる仕組みが企業にないと、我々がいくら学修成果を多様な評価軸で可視化しても、学びを社会につなげることは難しい」。可視化したその後がつながるのかが問われている。また、2019年に国際経営学部と国際情報学部を、2021年には理工学部にビジネスデータサイエンス学科を開設する等、新たな領域での教育にも取り組む。今後も学部・学科の改編を検討していくという。「教授会を中心に、社会が求めているものは何か、そのなかで本学が貢献するべきは何かといったことを常に議論し、多様な形で実現を図るようにしている」と河合学長は話す。学びと実践の接合への中大の取り組みに、これからも注目したい。(文/浅田夕香)学びや経験を統合的に見られる学生ポートフォリオへのリデザインを今後推進図1 コンピテンシーの可視化図2 C-compassを軸にしたPDCAサイクル●コンピテンシー自己評価 (改善ポイントのレビュー)●活動報告(取組みの記録)●コンピテンシーレベルの 目標設定●活動計画の設定School to Workこれからの就職を俯瞰する第1特集
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