カレッジマネジメント231号
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30リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022地域で活躍できる人材の育成・輩出に取り組むにあたり、学生と地元企業とのマッチングが課題となる大学は多い。この課題に対して山口大学は、2015年度より山口県内の12の高等教育機関、及び県内の自治体・企業と協働して「やまぐち未来創生人材育成・定着促進事業」に着手。文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択され、5年間の事業期間をへてS評価を得た。取り組みの詳細と今後の展開について岡正朗学長に伺った。「やまぐち未来創生人材育成・定着促進事業」は、山口大学をはじめとした県内12の大学、短期大学、高等専門学校と、165の自治体・企業など(2020年3月31日時点)が協働して地域社会が求める人材を育成する教育プログラムを構築・実践し、事業期間の5年間で卒業生の県内就職率向上を目指したもの。教育プログラムの構築にあたっては、当初の参加企業18社に働く人材に求める力を調査。その結果をもとに、①やまぐちスピリット、②グローカルマインド、③イノベーション創出力、④協働力、⑤課題発見・解決力、⑥挑戦・実践力を、地域が求める「6つの力」として整理し、これらの力を育成する「YFL(Yamaguchi Frontier Leader:やまぐち未来創生リーダー)育成プログラム」を構築した。YFL育成プログラムは、1年次から3年次にかけて以下の段階を踏みながら、6つの力の育成と山口県の地域・企業について理解を深めていく。●1年次:自治体や企業のトップリーダーによる講義「やまぐちの行政・経済を学ぶ」、特許やデザインなど知的財産について学ぶ「知的財産入門」などの科目で、地域で生き抜くための実践的なスキルを習得●2年次:合同合宿型フィールドワークで地域や地元企業・自治体への理解を深める●3年次:課題解決型の実践的なインターンシップで、課題発見・解決力を培う12の開講科目は8の必修科目及び4の選択科目で構成しており、所定の12単位を取得した学生には修了証として「YFL認定書」を発行。就職活動時のアピール材料としての活用を促している。加えて、年1回、県内の大学生を主な対象に「山口きらめき企業の魅力発見フェア(Jobフェア)」を開催。事業参加企業を中心にブース出展を募り、各社の魅力を学生に伝える場を設けている。岡学長は実施背景を「新入生の約75%は県外出身者で、3分の2が『知っている県内企業は0〜4社』という状況。企業を知らないと就職先の選択肢にも入らないので、早期に知ってもらうことから始めた」と説明する。出展企業に対しては、就職説明会ではなく企業の魅力を発信する場であり、成果は3〜4年後に結びつくと説明するとともに、出展・プレゼン内容について外部のコンサルタントによる評価をフィードバックし、質向上に努めている。取り組みの結果、山口大学の学生においては、事業開始か学年ごとの段階を踏みながら地域が求める力を育成事業協働機関への就職率が向上岡 正朗 学長地元企業の声をもとに、地域が求める「6つの力」とその育成プログラムを構築。県内就職率向上に取り組む山口大学大学での学びを社会での就業につなげる大学事例Case Studies_3

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