カレッジマネジメント231号
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38リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022つけることではありません。社会経験を積むなかでできあがってしまった「思考の殻」を多様性のなかで自ら壊し、新しい知を創造することに、より価値があるのです。その際に、18歳の学生のように、まだ凝り固まっていない柔軟な頭を持つ若い世代と共に学ぶことの意味も出てきます。一方で、若い学生にとっても、社会人経験があって自分にはない見方をできる上の世代と共に学ぶことは、視野を広げ、学ぶ意欲を高めるきっかけになります。学生の多様性の実現は、時代の要請でもあります。一つはグローバル化への対応です。国を越えた移動や交流が広がるなかで、世界の仕組みは「似た価値観を持つ人々で垂直的、固定的に一直線的に構成された社会」から、「異なる価値観を持つ人々が水平的に流動的に行き来する社会」へと、ドラスティックに転換しています。けれども日本の社会は、垂直的に系列化することを得意としてきたがゆえに、水平的に流動化する時代になかなか適応できず、ここ30年余もの期間、もがき続けています。グローバル化に対応するには、多様性に適応していくことが不可欠であり、そのためにも社会人を含めた多様な価値観を持つ学生が集まり、共に学ぶことが重要なのです。その一環として、トランスナショナルな(国を越えた)学生の多様性も求められることは言うまでもありません。二つ目は、マルチステージ化する人生への対応です。従来の人生モデルは「学習→仕事→老後」を順番に歩むものでしたが、人生100年時代の長寿化社会ではこの図式が崩れます。一生のうちにより多くの転機が訪れ、例えば「学習→仕事」の移行を2回、3回と経験します。10代から20代にかけて学習するだけでなく、30代や40代で仕事の経験を積んでから、キャリアチェンジや新たな思考様式を得るためにまた学習し、50代や60代以降に、残りの人生でやり遂げることを見つけるために改めて学習する、といったように。学習や仕事のステージをどの順番で経験するかという人生の選択肢は広がり、年齢にもあまり縛られなくなるのがマルチステージ化する人生なのです。そうなると、学びの場でも職場においても、異なる年齢層が同一のステージで交友することが多くなります。従って、大学に今求められていることは、高校生が社会に出るための中間地点になることではなく、「幅広い年齢層が交友しながら、それぞれに人生のフェーズを転換していくような媒介装置」になることです。そこを目指すとなれば、必然的にトランスジェネレーショナルな(世代を越えた)学生の多様性も実現させることになります。三つ目は、大学の経営面に関わること、日本の18歳人口国や世代を越えることを時代も求めている05101520253035日本韓国ベルギーオランダイタリアスロベニアスペインフランスギリシャポルトガルアイルランドハンガリーポーランドメキシコイギリスリトアニアチェコ共和国スロバキア共和国OECD平均ルクセンブルグオーストリアドイツチリエストニアトルコノルウェーオーストラリアコロンビアデンマークアイスランドフィンランドラトビアニュージーランドイスラエルスイススウェーデンOECD平均(%)31.931.330.526.025.124.624.524.122.920.119.619.619.217.517.217.016.216.014.814.113.313.312.912.811.611.010.410.09.89.58.15.75.13.52.50.5出典:OECD Education at a Glance (2017)(諸外国)及び 「平成27年度学校基本調査」(日本)。 日本以外の諸外国の数値については、高等教育段階別の初回入学者の割合。日本の数値については、それぞれ①短期大学、②学士課程、③修士課程及び専門職25歳以上の「学士課程または同等レベル」への入学者の割合(2018年)

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