44リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022の発達により、自由度が高く、かつ学生のニーズに即した授業形態がとれるようになった。「特に平成十年代以降進んだのが、多様なメディアの活用です。1998年の大学設置基準の改訂で『メディアを利用した授業』が位置づけられテレビ会議式の同時双方向型の授業が、2001年にはインターネットを利用した非同時双方向型、つまりオンデマンド型の授業が規定されました。同時に、それまでは通信制でも必須とされていた対面授業によるきめ細かな学習指導が情報通信技術の発展によって対面でなくてもできるようになったということを踏まえ、124単位全てをメディアを利用した授業で実施することも可能になりました。フルオンラインによる通信制の実施がここで可能となったということになります。図5・6に示すように、通学制では対面とメディアを利用して行う授業、この二つの方法だけなのに対して、通信はそれにプラスして印刷教材、放送授業と多様な手段が認められています。学習者一人ひとりのニーズと、それぞれの大学の状況に鑑みて、より教育効果の高い授業の方法を設定できるという、かなり自由度の高い建付けになっています」(大塚氏)自由度が高くなると重要になってくるのが「授業の質をいかに保証するか」という問題だ。これについてはどうだろうか。「授業の質の保証については通信制に限らず大学全体の議論になっており、常に見直しがなされているという状況ですが、通信制の場合には特に、大学側のほうで自主的に努力をしてきてくださっていると認識しています。例えばオンライン教育について、双方向性をいかに担保するか、本人認証をどうするか等、私立大学通信教育協会のほうでガイドラインを独自にまとめて加盟大学に示されています。こうした努力は今般のコロナ禍への対応でも大きな力となったのではないでしょうか」(大塚氏)「中教審では、通信制・通学制というラベリングがあることで、学生に対しては、その大学がどういう教育をどういうふうに提供しているかを事前に示し、学生は自分にあっているほうを選べばいいのだというメッセージを発することができていると指摘がありました。通信制大学は遠隔授業の質や成績評価、学生が学ぶ意欲を持ち続けられるようなきめ細かな指導等、丁寧な設計が必要な点が多く、各通信制大学はものすごい努力をされています。一方で、制度面でみると基準はゆるやかであり、自由度の高い、バリエーションの幅の広い教育が可能な柔軟な制度です。通信制大学の仕組みが大学の方針、実現したい教育目標と合致するのであれば、教育の手段の一つとして活用を検討いただくのもよい可と思います。」(大塚氏)では、現状の通信制大学における課題は何だと考えられるだろうか。「これは通信制大学固有の課題というわけではなく、高等教育機関全体に共通するものですが、やはり教育の質をいかに担保し、高めていくかということは大きな課題です。特に今回、コロナ禍への対策として『遠隔授業』が主要なツールとして注目されましたが、各大学緊急的に手探りで図4 通学制と通信制の設置基準における教員数と校舎関連に関する規定教員数/施設※仮に経済学部・工学部(各々収容定員4,000人、1学科のみ)とする大学の場合の試算(教員数・校舎面積)(教員数) 143人 6万2641㎡ 1万2440㎡42人(校舎面積)(教員数)(校舎面積)注:インターネット等のみの授業の場合、 校舎 基準は適用されない出典:中央教育審議会大学分科会質保証システム部会資料遠隔授業の質の保証通信制大学に期待される『先導者』としての役割
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