カレッジマネジメント231号
47/84

47リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022あっても他の学生と共に学ぼうという姿勢を持った人を受け入れたい」と池内学長は言う。一方、社会人学生の場合は学びの意欲はあるのに学びの習慣が身についていないケースも多い。とりわけコロナ禍において属性だけでなく学び方も多様化するなか、産業能率大学では、まず学びのスタートを切ってもらうために「産業能率大学とマネジメント」という1単位の授業を設けフォローアップを図っている。そこでは、大学について知ってもらうと同時に入学時の学習ガイダンスで通信教育課程における学び方やWeb試験の受験方法等を解説し、個別学習相談で学習上の不安をなくすよう工夫している。また、特に社会人学生は活字を読むこととそれをリポートに書くことの2つに不安を持つ人が多いため、個別にガイダンスを行う等の取り組みも行っている。学生が自主的に学び合い交流するための組織である「学生会」が地域やテーマごとに活動しており、学生同士が学び合う機会も作っているそうだ。科目修得試験も、通常の大学では一発勝負が常識のところを2カ月に1度試験をすることで、繰り返しチャレンジすることによる知識の上積みと精神的な余裕を学生にもたらしている。こうした学生のフォローにおいて重要なのは「教職協働」だと池内学長は語る。教職員全体のミーティングを定期的に行い意見交換しながら学生へのフォロー体制を検討し、実行に移している。入学式や学習ガイダンスにおいても、仕組みは職員が、学習の仕方は教員が説明する等して連携を取る。「スクーリングや試験の採点があるため教員のほうが学生との接点を持っているように思われがちですが、実は職員のほうが窓口等で学生の動向を詳しくキャッチしていることも多いので、とりわけ通信教育の場合は事務方の力が非常に重要になると思います。教職協働でそれぞれが見えないところを洗い出して課題を明確にし、その課題にどう対処するかのトライ&エラーを繰り返す。そうすれば学生へのフォローの質は自ずと高まっていくと思います」。さらに、外部委託による相談窓口の専任者が電話やメールによる相談にも対応している。窓口で問い合わせ内容を仕分けし、その場で答えられる内容に関してはその場で回答、複雑な内容については職員が折り返す対応をしている。このサポート体制にも池内学長は手応えを感じているという。今後の大学教育の在り方について、池内学長は「学位にこだわらない学びのスタイルの構築が必要だ」と語る。中央教育審議会の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」答申にあるように、18歳人口が減るなか、社会のニーズをどう取り込み対応していくかが大学にとって大きな課題となっている。それを考えた場合、学位だけではなく資格やスキルの修得を目指す社会人学生がより学びやすい環境を整えるべきだろうという考えだ。「技術革新のスピードが増すなか、今必要な能力のためにわざわざ学位を取っていたのでは、その間に世の中が変わってしまうだろうと思うのです。アメリカのコミュニティカレッジでいう職業訓練コースのようなモデルに転換していく等、もっと短い期間で修得できる履修証明のような仕組みを作り、しかもそれが職業の中でしっかり活かせるような体制を大学主導で構築することが必要。今、まさにそのチャレンジに適したタイミングではないかと思っています」。 (文/高橋晃浩)電話相談の窓口をプロに委託することで職員は複雑な相談に特化短期間でスキルを修得し仕事で活かすその体制を大学主導で構築すべき通信制大学は、なぜ学生の多様性が実現できるのか?第2特集図2 在学生の内訳女性 52%男性48%010203060代以上50代40代30代23~29歳~22歳●男女比●年代別23142027143(%)

元のページ  ../index.html#47

このブックを見る