カレッジマネジメント231号
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行政DXと地域DXの2本柱で進める自治体DXによる新たな価値創出55リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022資すること。そのためにはまずデジタルによる業務変革を徹底し、本来やるべきことに注力する余白を積極的に生み出すこと、デジタルによる新たなサービスを創出していくことの2軸が必要です」。塩尻市では前者を「行政DX」、後者を「地域DX」と称する。目的達成のために積極的にデジタイゼーションを推進し、新たな価値創出を行うデジタライゼーションにも同時並行で挑戦中というステイタスだ。それぞれ見ていこう。ICT先進自治体としての強みを生かし、デジタルによる行政サービスモデルや働き方の抜本的な改革を進め、住民の多様なライフスタイルに寄り添える地域社会の実現を目指して、以下4点を軸に活動している。①新たな行政手続きの実装対面による従来型の行政手続きを見直し、利便性が高く誰でもアクセスしやすい行政手続き環境の実現を目指すもので、キャッシュレス決済等の先端技術の検証も含む。行政サービスで重要なのは個人特定のプロセスだ。これをデジタルでどうするか。マイナンバーカードの普及促進が叫ばれるのはこのためである。「まずは、今アナログでやっていることをデジタル代替することを目指しています」と横山氏は言う。行政サービスが、住民にとってより便利なものになることを目指している。全国の自治体でDXが推進される背景には、個別の事情とは別に、国からの要請がある(TOPICS参照)。こうした政策を背景にしつつ、塩尻市は「新たな時代の流れに即応できる街づくり」を小口利幸市長が標榜し、自治体としての経営戦略である「第5次塩尻市総合計画(長期戦略・第3期中期戦略)」の中にDX戦略を位置づけている。その意味合いについて、「今後の日本社会が置かれる状況を見るに、市役所も変化に対応して変革する必要があります」と小澤氏は話す。「市役所の役目は、市民のQOLに長野県塩尻市は1996年に全国で初めて自治体によるインターネットプロバイダーを導入したほか、2000年には市内の公共施設等を結ぶ公設光ファイバー網を整備する等、ICT整備に先見の明がある自治体の1つである。現在進めているDXの流れについて、企画政策部参事兼CDO(Chief Digital Ocer)の小澤光興氏、デジタル戦略課DX推進係係長の横山朝征氏、官民連携推進課課長補佐の太田幸一氏にお話を伺った。企画政策部参事兼CDO小澤光興 氏デジタル戦略課DX推進係 係長横山朝征 氏官民連携推進課課長補佐太田幸一 氏事例report_02 長野県塩尻市DXを推進する国の政策と変化を求められる自治体行政DX:行政の事業体と提供サービスのデジタル化T O P I C S■「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」 -2020年12月25日閣議決定国は「デジタル活用により一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化の実現」を目指し、①データ利活用 ②デジタル・ガバメント(Society5.0時代にふさわしい行政サービスを国民一人ひとりが享受できること)を掲げる■基本方針に伴う主な動き①IT基本法の見直し:2000年制定の内容をチューニング②デジタル庁設置:推進の司令塔③自治体DX推進計画:自治体情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、行政手続きのオンライン化、AI・RPAの利用促進、テレワークの推進、セキュリティ対策の徹底国のDX関連動向

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