カレッジマネジメント231号
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58リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022問いを立てる力は何故必要か入試は社会へのメッセージ#2安斎勇樹氏株式会社MIMIGURI視点提供インタビュー株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO / 東京大学大学院 情報学環 特任助教1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』(「HRアワード2021」書籍部門最優秀賞)、『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。新学習指導要領の柱である「探究」を聞いたことがない読者はそろそろ少数派になりつつあろうが、では今なぜ探究が必要なのかを考えたことがある方はどのくらいいるだろうか。本稿では「何故初中教育で探究活動が盛んになっているのか」「高等教育機関はその流れをどう汲むべきか」を軸に、ワークショップデザイン専門家で「問い」のスペシャリストでもある安斎勇樹氏にお話を伺った。――新課程の軸である探究とは、そもそも何故必要なのでしょうか。背景には、社会が多様化・複雑化し、何が正解か分からない時代に突入していることがあります。客観的な正解があれば、そこに早く到達するためのスキルを磨けばよかったのですが、答えが答えかどうかも分からない以上、答えにたどり着く問いをどう設定するのかが重要になります。何に力を使うかを間違えると永久に答えが出ない。適切な問いを立てる力がより重要になっているわけです。こうした時代に必要とされるのが「T字型人材」です。かつて人材ニーズにおいて、メンバーシップ型雇用制度でニーズが高いゼネラリスト(一型人材)から、情報化社会で様々な業界構造が変容する中でスペシャリスト(I型人材)へとニーズが変容しました。広く浅く、ではなく、深い専門性を持つことが競争優位性になったのです。T字型人材はその次に提唱された概念で、一型とI型を組み合わせ、横棒が「知識の広さ」、縦棒が「専門性の深さ」を示すもの。多様性が求められる社会において、知識の幅と深さ(専門性は1つ=シングルメジャー)、その両方を持つ人材が求められるようになったという経緯があります。 そのうえで、これからの時代は「連続的なスペシャリスト」を志向する必要があります。各所で言われているように、人生100年時代において、自分の人生を自律的に設計するためには、18歳段階で得られた知識だけでは絶対に足りません。常に自分をチューニングしながら、軸足となる専門性を複数持つ必要がある。そのためには、日常の内側に、自分の軸足を持つために探究し続けるというプロセスを組み込むことが大事です。――では、T字型人材になるにはどうすればよいのでしょうか。そこに大学の大きな役割があると私は考えています。多様化する社会で必要とされる人材像が変化

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