59リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022学士課程で、まず1分野で縦に掘るI型を極めること。大学で、問いを起点にした学びを1サイクル回すこと。1つ目の専門性を獲得させることです。掘り進める知の深化は新たな問いを呼び、横の異領域に拡げ、結びつける知の探索につながる。この組み合せが人材としてのオリジナリティーになります。これだけ社会が複雑化・多様化すると、全員が同じ知識を同じレベルまで学ぶことは難易度が増している。そして、それが1つの絶対解につながるわけでもない。だから、大学においては、自分は何に興味があり、社会にどう対峙したいのかという軸足を決め、答えがない事象に対して「リサーチクエスチョンを立てて自分なりの答えを出す」というアカデミックな探究サイクルを回してみることが必要です。サイクルを自力で回す経験を一度すれば、その後どの領域に進んでもその基礎力になる。汎用的技能としての探究が叩きこまれていることが、社会で価値を創出していくうえでも重要です。――まずはI型に「掘る」行為が、答えのない問いに対するスタンスやマインドを醸成するということを理解する必要がありますね。本来、そこが得意なのが大学なはずです。だから、大学の教育がきちんと機能していれば、そういうものが身につく。そしてここが、高校までで行われている「探究学習」との接続ポイントではないでしょうか。高校では新課程において、探究的サイクルに取り組むチャレンジが始まっている。自分の問いを軸に周囲を巻き込んで学び、一定のアウトプットを出す。その中で「この問いを解決するにはこういう内容を学び重ねる必要がある」「この問いの先には別のこういう問いがある気がする」という知の深化や探索のヒントを多く得る。しかし、その取り組みに学問的専門性はない。だからこそ、その先に専門性を学ぶ大学教育が位置づけられると思います。――T字型人材になるための方策は、何故探究的な動きである必要があるのでしょうか。それは、何故アクティブラーニングが隆盛なのかと読み替えることもできます。端的に言えば、「先生も答えを知らないことに挑むから」です。探究とは、「物事の本質を明らかにしようとすること」です。それは絶対的・客観的な真理ではなく、自らを起点とした納得解を作ること。問いを起点に本質に迫る「知」を自ら創り出していくプロセスです。問うのも答えを創り出すのも自分であり、そのプロセスに大きな学びと、人材育成のニーズがある。社会情勢が激変する中で、学ぶべき知識は激増しており、社会に必要な汎用的技能もどんどんアップデートさ図1 T字型人材とは異領域に拡げ、結びつける(知の探索)異領域に拡げ、結びつける(知の探索)探索と深化の両利きでT字型に探究を進めていく1つの領域を深掘りする(知の深化)問い(探究テーマ)縦に「掘る」行為が問いを立てる体力を育む
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