リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 202260れ、能動的な知識学修を身につけなければ対応できない。コロナ禍がそのいい例です。経営学的にも、一度獲得した競争優位性の賞味期限がどんどん短くなっており、企業は柔軟にアジャイルに戦略を描き直しながらイノベーションを志向していく必要がある。そんな社会では、教員は分かっていることを教える役割から、自分も知らないことがたくさんある前提で、学生の協同的学習者になる必要があります。そして既存のやり方では解決できていない課題に向き合うからこそ、周囲と対話しながら自分なりの解を突き詰めていく学びのプロセスが必要なのです。理論や一定の解が記された教科書のその先に探究がある。また当然のこととして、学費を納めて大学の教育サービスを享受しているのは学生であり、彼らのニーズが変化しているのだから、大学はバリュー(提供価値)を変える必要があります。――大学教育で探究の質を上げるにはどうすればよいのでしょうか。探究は、①問いを立てる→②論拠を集める→③自分なりの答えを出す という3つのプロセスから成り立っており、それぞれについて評価する必要があります。①であれば問いが確からしいか。②であれば論拠に過不足がないか、論拠の内容が適切か、付与されるべき専門性が備わっているか。③であれば論理的にアウトプットできているか。こうした内容を吟味してフィードバックしていくことで問いの精度は上がり、全体としての質も向上する。また、大学は専門教育の場所と思うと抜けがちな観点ですが、実は重要なのは専門性以前の初年次教育。「大学はこの作法でアウトプットを出す場所である」というアカデミックライティング教育が重要です。初年次教育だけでなく、大学教育は全体的に意味づけが弱いと感じます。何のためにこの科目を履修するのか。履修の順番や科目同士の連関がどのようにデザインされているのか。メタカリキュラムデザインとも言うべき一貫性と必然性が弱い。T字の縦をどう掘って、横をどう広げるのか、ファシリテーション的なガイダンスが弱く、本来伝えるべき相手に適切にデリバリーされていないのは問題です。それは先に挙げた探究の②論拠の質に大きく関係します。知識を多く学ぶことの意味づけが問いに応組織個人日常に探究プロセスを組み込む人生100年時代連続的なスペシャリスト日常における個人の探究両利きの経営VUCAの時代求められる持続的イノベーション組織に新たな風を吹き込み内部から変革の種を撒く自分の可能性を拡張し深掘りしながら変化し続ける図2 これからの人材育成に必要な探究プロセス入試は社会へのメッセージ問いを軸にした学修の意味づけと対話が探究プロセスの質を向上させる
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