61リクルート カレッジマネジメント203 / Mar. - Apr. 201761リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022過剰なのかに気づくことができます。そのため、問いとは本来、集団で問うていくことに重きを置いたサイクルです。自由研究は自力でできますが、社会での問いは集合知で社会にとって意味のある答えにしていかないといけない。同じ問いでもほかの人との認識や意味づけは違う。それは自分にとっての前提や解釈と他者にとってのそれが違うからです。だからこそ、問いは集団のコミュニケーションを誘発し、問いを軸にした対話の中で自己の内省が起こり、創造的対話が次の問いを生み出す。私はワークショップの専門家ですが、ワークショップとは、課題設定と対話のプロセスで納得知を作っていくプロセス設計です。テーマに応じた対話の抽象と具体を往復しながら、問いに対する自分達なりの解の解像度を上げていく。時間的制約の中で結論を導こうとする「議論」を「対話」に変えることで、相互理解や新たな意味を生み出すことにつながる。これを大学が作れるかどうかで学びの深さがだいぶ違うはずです。つまり、個人活動としての探究と集団の対話による問い磨きの2軸を両立させることで、大学教育は高校教育と接続され、さらに進化していくのではないでしょうか。(インタビュー・文/鹿島 梓)じて設計されることで、文献に当たる意味や価値が分かるようになり、先に挙げた探究の②論拠の質が劇的に変わり、③答えの妥当性に関わり、ひいては次の①問いの設定に関わる。それこそが高校ではできなかったことのはずです。まずは高校の探究にアカデミックな作法をインストールしたうえで、大学の専門教育や研究につなぐというカリキュラムプロセス設計を丁寧に行うことが必要です。探究学習は学習者の内発的動機づけがなければ成立しません。だからこそスムーズに軌道に乗せるには、イントロダクションが大事なのです。――探究の構造を知ること、高校までの探究を大学での研究につなぐために初年次教育を再構築することを挙げていただきました。ほかに、問いを軸にした教育に必要なことはありますか。バイアスや知識がない状態の自分が立てた問いの精度を上げていくには、他者との対話がとても大事です。対話することで、同じ問いでも人によって考えが違うことに気づく。インタラクションを入れることで、自分を相対化してメタ認知することができる。認識を外化して客観視することで、筋が良いのか悪いのか、何が足りないのか、何が図3 問いの基本サイクル問いの生成と共有認識と関係性の変化創造的対話の促進解の発見・洞察思考と感情の刺激
元のページ ../index.html#61