カレッジマネジメント231号
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リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 202262事例report 大正大学 地域戦略人材育成入試図1 地域戦略人材育成事業入試部 部長井上隆信 氏地域創生学科 教授浦崎太郎 氏〈新時代に必要な能力〉〈新カリキュラムが育む3つの力〉地域戦略人材(地域クリエイター)の育成と活躍の場アントレプレナーシップ養成新リーダー像これからの社会や地域の「価値」をクリエイトする幅広い学融合の知識や創造力Ⅰ変化に対応するカⅡ多様な人材とのネットワーク形成スキルの養成異分野間ネットワーク形成のリーダーとなるためのコミュニケーション力Ⅲ多様な価値観を調整するスキルの養成地域クリエイターとして活躍するあなたのために自己実現地域で企業で創業して入試は社会へのメッセージ問いを立てる力は何故必要か創立100周年に向けた大学教育のリ・デザイン新旧課程を巡る高大接続の課題感大正大学は、2022年度入試より総合型選抜の一環として「地域戦略人材育成入試」を開始した。その内容、背景にある課題意識や教育改革について、地域創生学科の浦崎太郎教授、入試部部長の井上隆信氏にお話を伺った。現在、大正大学は2026年に迎える創立100周年に向け、教育改革を進めている。文部科学省の令和2年度「知識集約型社会を支える人材育成事業」に採択された事業がそれだ。社会変化に対応した大学作りを2026年からバックキャスティングで行うべく、「地域戦略人材育成」を軸に教育・研究体制を整備するのが概観である(図1)。その筋道を「MIGsアジェンダ2026」と規定し、実現のための具体策をまとめた行動計画(図2)を策定して「地域戦略人材」を育むという筋書きだ。併せて、全学必修の第Ⅰ類科目で徹底したチュートリアル教育を行い、横断型科目やデータサイエンス等の次世代スキル科目を経て、専門の第Ⅱ類科目でゼミの学びを、第Ⅲ類科目でアントレプレナーシップを育む、という教育体系を整備した。こうした教育改革は2つの強烈な危機感に裏打ちされている。まず、18歳人口の減少が大学経営を直撃する中で、生き残るためには独自性が必要だという観点。もう1つは、大学のバックボーンである仏教に関連した危機意識だ。「現在、地方の衰退によって多くの寺院が存亡の危機にあります。地域振興は寺院存亡の生命線なのです」(浦崎教授)。だから大正大学は地域主義をうたい、地域戦略人材育成を掲げるのだ。それは大学のDNAの根幹に関わる原動力なのである。地域主義の具現化は、2014年に地域構想研究所を、2016年に地域創生学部を開設したことに端を発する。日本の将来像における地域振興の重要性から、首都圏であっても地域のあり方を構想できる人材育成が必要との強い信念のもと、現在も継続的にチューニングを重ねている。その象徴であるMIGsの実行状況は魅力化推進部により定期的に進捗確認され、必要に応じて、専務理事が招集する総合政策会議に接続される仕組みで、全学挙げての改革を推進している。もう1つ検討の軸は、高大接続に関する課題意識である。元高校教員でもある浦崎教授は、「新学習指導要領導入で高校の学びはアップデートされつつある。大学は新旧のアプローチの違いをきちんと理解しないと、接続のあり方を見誤る」と話す。新旧課程で最も違うのは、「問い」の有無だ。例えば地域課題解決に向けたアプローチでも、旧課程は「大人が与える地域課題の解決に取り組ませることで当事者意識・能力が向上し、地方創生が実現する」と考える。一方、新課程は「自らの興味関心・問いへの取り組みを支援すると、地域に多様な才能が開花し、自分らしく地域に参加する喜びを実感することで地方創生が実現する」と考える。この差はそ

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