カレッジマネジメント231号
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リクルート カレッジマネジメント231 │ Jan. - Mar. 2022めに設計された一貫性のある一連の行動のことである。すべての行動をコーディネートして方針を実行する。(以上(1)から(3)の説明は同書108〜109頁より引用)その一方で、ルメルトは悪い戦略の4つの特徴として、空疎である、重大な問題に取り組まない、目標を戦略ととりちがえている、まちがった戦略目標を掲げている、の4つを挙げている。このうち、3つ目については、「困難な問題を乗り越える道筋を示さずに、単に願望や希望的観測を語っている」との説明が、4つ目については、「戦略目標とは、戦略を実現する手段として設定されるべきもの。これが重大な問題とは無関係だったり、単純に実行不能だったりすれば、まちがった目標と言わざるを得ない」との説明がそれぞれ付されている。これらの4点は、企業、大学、行政など分野を問わず、戦略立案において陥りがちな極めて重要な問題である。特に大学や行政のビジョンまたは中長期計画と呼ばれるものに、この傾向が強いように思われる。どうすればこのような問題に陥ることなく、ルメルトが主張する3つの要素で構成される基本構造を持った戦略を創出し、実行に繋げることができるのだろうか。大学の現状を踏まえつつ考えてみたい。最初に行うべきは、自校の現状と外部環境を正確に認識し、自らの強みと問題を明確化することである。収入・支出・収支構造の推移、入試・教育・学生・就職状況の推移、これらを取り巻く外的環境の変化、ベンチマーク校の動向など、多様なデータを収集・分析した上で、可視化・共有する。これが出発点であり、戦略立案の土台となる。これらの作業と重なる部分もあるが、自校が有する経営資源を把握・評価することは極めて重要である。特に、人的資源である教員や職員の能力・業績、強み・持ち味などを把握することは、戦略展開の可能性を検討する上で不可欠74現状と将来像を道筋で結んだ全体が「戦略」大学を強くする「大学経営改革」Innovating University Management図1 戦略に関する概念図 経営資源環境変化道 筋現 状将来像【戦 略】【行 動】行動が新たな戦略を生み出す戦略が行動に繋がる

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