カレッジマネジメント232号
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10リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022が悪いほうがツッコミやすいですね。1km以上って書いた瞬間、恐らく「お前バカか、俺の家から駅まででも1km以上はあるぞ」「時速XXkmの新幹線で東京大阪間2時間はかかるんだぞ」といった風に、周りが色々なことを言ってくる。これが大事なんです。何も書かずに「分かりません」で終わった白紙の状態は、失敗もせず本人はほっとしているかもしれないけど、こうしたプロセスにおいて「バカじゃないか」とさえ言われない。ああ、分からなかったのね、で次の人にいってしまう。価値創造の営みに加われません。黙っているより何か動いてみるという思考や行動に慣れることが大事です。失敗解答に見えたものがどんどん磨かれていく。大学はそうした実験的な環境を提供することで、合格点を下げることに寄与できるのではないかと思います。─こうした思考スイッチは、受験勉強を含め正解を求めてきた思考からすると、なかなか難しそうです。思考力のトレーニングを正解型のゲームのルールでやろうとして無理しているように見えることが結構あります。例えば入試において、正解のある世界は効率性を重視することができるので、採点が簡単なマークシートが典型でしょう。知識を問う形においてはその形が有効ですが、思考力を測ることは一人ひとりの多様性に関わってくるので、莫大な時間がかかると思います。面接でも一人ひとり全部見なければいけなくなるわけですから。そこでやっぱり効率性が必要、となると、結局新しいことを古いモノサシでやってしまうことになります。客観性、公正、公平を求めてしまう。そうした要素がないと入試はダメだというのも1つの常識でしょう。しかし、思考力は一人ひとりの多様性を求めているのに客観性が必要というのは、実はちょっとおかしい。多様性というものは結局主観の塊です。主観が100個あったら、その100個を認めるということだと思うのです。例えば入試で入試官がものすごく気に入った人がいて、あなた合格ねと言った時に、客観性も何もないですよね。ですが特定の人がいいと言ったら合格にするというようなルールにすることも極論必要かもしれません。─時代が変わる、ゲームが変わる。地頭を鍛えることが大切になる。合格点を低くして行動しながら進んでいく。こういった変化にどれだけの人が追いついていけるのでしょうか。多様性を認めるということは多様性を認めないという人も認めることです。変化に対応して全員が船に乗らなければいけない、という話になりがちですが、全員が船に問題解決(How?)問題発見(Why?)図2 WHY(問題発見)とHOW(問題解決)

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