カレッジマネジメント232号
12/108

12リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022全日本空輸(以下、ANA)は、産官学連携で「誰もが移動をあきらめない世界」を目指した「Universal MaaS(ユニバーサル・マース)」プロジェクトに取り組んでいる。MaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、いろいろな種類の交通サービスを、需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合すること。なかでも、Universal MaaSは、高齢者や障がい者など移動をためらいがちな層に対して、ユニバーサル・デザインに基づく総合移動サービスを提供することを目指す。ANA企画室MaaS推進部マネージャーで、本プロジェクトの中心人物である大澤信陽氏は、きっかけをこう語る。「私の義理の祖母が高齢の車いす利用者で、『他人に迷惑を掛けたくない』『道中で嫌な思いをしたくない』という意識から移動をためらって、私に子どもができた際にもしばらく会えずにいたんです。数年後、何とか背中を押して、会いに来てもらったのですが、その時に祖母がすごく喜んでいたのが印象的で。それが原体験となっています」世の中はいわゆる「健常者」の目線で様々なサービスが構築されており、それに対して不便を感じている人は大勢いる。この課題を解決するため、大澤氏はANAグループの社員提案プログラムに手を挙げた。当初は新たなモビリティツールの開発を目指していたが、誰もが利用しやすいサービスを提供したいと検討を重ねるなかで、Universal MaaSというコンセプトが見えてきた。しかし、大澤氏にはユニバーサル・デザインに関しても、MaaSに関してもその時点で専門知識があるわけではなかった。また、複数の交通機関等が連携して成立するMaaSは、そもそも1社だけで推進できるものでもない。そこで、大澤氏は社外につながりを求め、議論を重ねていった。「地域の移動課題に取り組んでいた横浜国立大学の有吉亮先生の活動を知り、感銘を受け、大学のウェブサイトからコンタクトを取ったのが始まりですね。さらに、有吉先Universal MaaSプロジェクトANAが京急電鉄、横須賀市、横浜国大等と産官学連携で取り組むUniversal MaaS企業間の連携にみる社会課題解決と新たな価値創造Case 企業事例移動をためらう層を支援するサービスを協働の原点にあるのは人と人とのつながり社会課題が複雑化するなか、あらゆる分野で複数の企業や組織が連携し、お互いの強みを活かしてソリューションを見いだす動きが活発化している。2つの事例を通して、このような協働における課題やそれによって生まれる価値を探ってみたい。CASE1全日本空輸株式会社企画室MaaS推進部 マネージャー大澤信陽 氏2019.6Universal MaaSの産官学共同プロジェクトがスタート2020.2Universal MaaSの社会実装に向けた連携開始を発表2021.9ANA空港アクセスナビに「バリアフリー地図/ナビ」機能を追加2022.1車いすユーザー向け移動支援サービス「一括サポート手配」の実証実験の開始を発表2022.2横須賀市で視覚障がい者向けの歩行支援サービスの実証実験を実施「Universal MaaS」プロジェクトのプロセス

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る