カレッジマネジメント232号
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13リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022生から京急電鉄や横須賀市のご担当者をご紹介頂きました。こうして、Universal MaaSの考え方に共鳴し、熱量を持って取り組んでくれる人が集まり、産官学連携の枠組みができていきました」2019年、ANA、京急電鉄、横浜国立大学、横須賀市の4者の連携でプロジェクトがスタート。ANAは交通事業者として参加するとともに、本プロジェクトのリーダーを務め、京急電鉄は同じく交通事業者としてバス、鉄道等に関してアセットを提供、横浜国立大学はアカデミックなスタンスからのアドバイザリーの役割を担いつつ、データ取得・解析なども担当し、横須賀市は、自治体としてこの取り組みを地域に根づかせるとともに、市内施設の利用や店舗情報の提供等で貢献した。このように民間企業、大学、自治体がそれぞれの強みを活かしてプロジェクトは進み、2019年度から横須賀市を舞台に実証実験が始まった。ところで、このような業界や組織の枠を超えた連携を進める際には、どのような課題が生じうるのだろうか。「お互いが組織の看板を前面に出して、自社にどんなメリットがあるのかといったことにこだわると、このような協働はうまくいきません。本プロジェクトの名称も当初は『ANA』と頭につけていたのですが、とってしまいました。大切なのは熱量を持った個人なんです。自分が何を実現したいのかという本音のコミュニケーションを重ねることが必要なのだと思います」また、プロジェクトメンバーが個々の組織を動かそうとする際にも、それぞれの組織の“常識”をどう乗り越えるかがポイントになると大澤氏は言う。「組織には組織の常識があります。会社のポリシーや前例を踏まえると簡単にはOKが出ないことも少なくありません。これを説得するには熱量だけでは不十分で、この取り組みの社会的意義等を理論的にプレゼンテーションする必要があります。これがなかなか大変なのですが、多様なメンバーと議論や実証実験を重ねることは、学びや発見が非常に多く、理論面の強化にもつながりました」2021年9月には、社会実装第一弾として、航空機の利用者向けの経路検索サービスであるANA空港アクセスナビに「バリアフリー地図/ナビ」機能を追加。2022年1月には、JR東日本、東京モノレール、MKタクシーとの連携で、車いすユーザー向けの移動支援サービス「一括サポート手配」の社会実装に向けた実証実験の開始を発表。2月には、横須賀市、損保ジャパン、プライムアシスタンス、Ashirase、ANAウィングフェローズ・ヴイ王子との連携で視覚に障がいのある方々向けの向けの歩行支援サービスの社会実装に向けた実証実験に取り組むなど、実証実験ごとに最適なパートナーと協力しながら、「誰もが移動をあきらめない世界」は実現に近づきつつある。(文/伊藤敬太郎)それぞれの組織に根づく常識をどう乗り越えるか乗り物人材(Heart&Hand)情報(データ)人が乗り物をつなぐ情報が乗り物をつなぐ情報が人をつなぐ誰もが笑顔で移動できるUniversal MaaSの考え方01特集正解がない時代の「学びのデザイン」Universal MaaS公式ウェブサイト https://universal-maas.org/複数の事業者の連携によって、航空機・鉄道・バス・タクシー等の乗り物と、ユーザーが登録した移動経路や特性情報、位置情報等のデータ、さらにサービスに関わる人をつなぎ、誰もが笑顔で移動できる世界の実現を目指す2022年1月に発表された「一括サポート手配」を利用している車いすユーザーの様子。事前にサポート情報や移動経路を登録することで、鉄道、モノレール、航空機、タクシー等複数の交通事業者のサポートを一括して手配できるサービスだ

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