14リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022オムロンは、機械が人の可能性や創造性を高め能力を引き出す「人と機械の融和」というコンセプトに基づき、2013年から卓球ロボット「フォルフェウス」の研究開発に取り組んでいる。現在、同プロジェクトで技術開発リーダーを務める技術・知財本部 コアテクノロジーセンタ ロボティクス部の中山雅宗氏はその経緯を次のように語る。「2013年に中国で当社のプライベート展示会があり、中国で『人と機械の融和』を体現する技術を示すには卓球ロボットが面白いのではないかということで研究開発が始まりました。毎年、メンバーを入れ替えながら展示会を目標にテーマを設定して開発を続けており、現在は第7世代です。最初の3、4年は、ボールを認識し、打ち返すロボット制御の精度を高めることがメインでしたが、第5世代から、この卓球ロボットを使って『人の可能性を広げる』というところに研究開発の領域をシフトしていきました」第5世代では、プレイヤーの動作と上級者の動作の違いから、上達のためのアドバイスを行う機能を構築。そして、次の第6世代では、卓球ロボットを使って「人のモチベーションを高める」という新たな研究領域に足を踏み入れた。そこで研究開発のパートナーとして浮上したのがゲーム・デジタルエンタテインメントを得意とするスクウェア・エニックスだ。「当社は、もともと共創によって新しい価値を生み出すことを方針の一つとしています。卓球ロボット開発には様々な技術が必要で、当社が全てに関して最先端の技術を持っているわけではないので、他社の尖った技術を取り入れていこうというのは必然的な流れでした」(中山氏)オムロンは電気機器メーカーとして、生体データ等のセンシングやロボットの制御技術に関しては強みを持っている。一方で、人のモチベーションを高めるテクノロジーに関してはスクウェア・エニックスに強みがある。この両者の強みを掛け合わせることで、フォルフェウスを新たなフェーズに進めることがこの共同研究の狙いだった。そこで、スクウェア・エニックス側が提供したコア技術が「メタAI」だ。同社テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー(当時)の三宅陽一郎氏はこう解説する。フォルフェウスプロジェクトオムロンとスクウェア・エニックスがお互いの強みを活かし、人のモチベーションを高めるAIを共同研究2013年から卓球ロボットの開発をスタートフォルフェウスの進化のために必要だったメタAICASE2オムロン株式会社 技術・知財本部コアテクノロジーセンタ ロボティクス部中山雅宗 氏株式会社スクウェア・エニックステクノロジー推進部リードAIリサーチャー(当時)三宅陽一郎 氏2013初代フォルフェウスを開発 中国で初展示2014-17初代~第4世代フォルフェウスをCEATECに出展2018第4世代フォルフェウスをCESに初出展2022第7世代フォルフェウスを国際ロボット展に出展2020第6世代フォルフェウスをCESに出展。スクウェア・エニックスと共同研究フォルフェウス開発のプロセス
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