カレッジマネジメント232号
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15リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022「メタAIは、ゲーム産業では40年くらい前から研究開発が進められてきました。ゲームに登場するキャラクターを動かすのは単体のAIですが、メタAIはユーザーがどうしたいのかといった心理状態を把握し、それに合わせてそれぞれのキャラクターに指示を与えるという技術です」このメタAIを進化発展させていくうえで、スクウェア・エニックスにも今回の共同研究に取り組む動機があった。従来のゲームはゲームの閉じた世界の中で完結していたが、位置情報ゲーム等が登場するなかで、ゲームの世界と現実の世界の融和した空間でデータをどう集め、処理していくかといったことが新たな課題になっていた。ある程度限定された範囲で現実世界のデータを扱う卓球ロボットは、この課題にフィットする研究テーマだった。では、この異業種間の共創において壁になったのは何だったのか。オムロンの中山氏はこう説明する。「お互いの文化の違いが大きく、そのギャップをどう埋めていくかは難しい課題でした。当社は電気機器メーカーとして、安全や安定を追究する文化がありますが、スクウェア・エニックスさんは、ゲーム会社として尖ったもの、面白いものを追究する文化があります。議論の過程でそういった違いばかりが際立ってしまう時期もありました」技術的にも、スクウェア・エニックスがゲームという閉じた世界の中で、「ノイズのない」データを扱うのに対し、オムロンは現実世界の「ノイズの多い」データを扱っている。この前提条件の違いも大きかった。この壁を乗り越えるきっかけは意外なものだった。「一度実際に卓球をしながら議論をしようということになったんです。2日間にわたって、卓球のセミプロに色々な球を打ってもらい、それを打ち返す私達のモチベーションがどう変化するかを実地で確かめていったんですね。すると新たに見えてくるものがいくつもあって。体験を共有することによって、お互いがこの共同研究でどのように貢献できるかが改めて明確になり、膠着状態にあった議論が再び進み始めました」(三宅氏)その後、研究開発が進み、モチベーションを高めるラリーの完成度は高まっていった。卓上に設置したカメラでプレーヤーの笑顔度、瞬きの回数、心拍数をセンシングし、これらの生体データをもとに、メタAIが快/不快、覚醒/鎮静の2軸でプレーヤーの心理状態を判断。その時点でプレーヤーのモチベーションが高まるよう卓球ロボットに指示を送り、最適な返球をするという技術が一応の完成を見ることになった。「異業種間の共同研究は、あんなことができるこんなこともできると話が膨らんで最初の議論は楽しいんです」と三宅氏。しかし、お互いの文化が違えば違うほど、次第に前述のような壁の存在が明確になり、ここでそれぞれがお互いの文化にこだわりすぎると研究は前に進まなくなる。「だからこそ、共通の体験をもとに共通言語を持つことができたことが大きかったですね」と中山氏が言うとおり、一歩踏み込んだ相互理解をどのような手段で図るかが重要なポイントと言えそうだ。(文/伊藤敬太郎)フォルフェウス開発における2社の役割共通言語を持つことで文化の違いを乗り越える01特集正解がない時代の「学びのデザイン」2020年1月、オムロンは米国ラスベガスで開催されたCES2020に第6世代のフォルフェウスを出展。多くの海外の参加者が、フォルフェウスに新たに備わったモチベーションを高めるラリーを体験したオムロンは、電気機器メーカーとして培ってきたセンシング技術とロボット制御技術の面で、スクウェア・エニックスはゲーム開発を通して培ってきたメタAI技術の面で、フォルフェウス開発に貢献したオムロンスクウェア・エニックスフォルフェウスセンシング技術ロボット制御技術メタAI

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