17リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022「自分のキャリアは自分でデザインする、キャリア自律が求められています。労働期間が長くなるほど、環境変化に対応しなくてはならないので、『変身資産』(表)を増やすための自己投資が重要です。ポイントは金融同様、長期・分散・積み立てでの運用。長期間、日々コツコツ、5つの項目にバランスよく先行投資するのです。自分の付加価値を常にアップデートすることで、連続スペシャリストとして活躍し続けることができるでしょう」。一方、キャリア自律しようにも未来が描きづらい時代でもある。「だからこそ、何が起きても乗り越えられると思えるレジリエンスが大事。変身資産が多ければ変化に対応しやすくなるので、人生における真の安心感が得られ、自己効力感が高まるのではないでしょうか」。キャリアオーナーシップを持つ、専門性と教養を兼ね備えたπ型人材―。社会が求める人材を、どのように高等教育機関は育成すればよいのか。徳岡氏は、答えのないものを考え続ける「知的基礎体力」の涵養を期待するとし、3つの取り組みを進言する。1つ目は、好奇心の喚起だ。「人や社会との接点は好奇心を刺激します。大学は、産業界、社会課題、海外といった社会の実態と学生をつなげる機会や、教授や友人との出会いなど、好奇心を高める環境作りを。学生も、勉強する意味が見いだせるはずです」。2つ目に、インプットのための読書習慣を挙げる。「活字離れが進んでいますが、ネットで情報を眺めるだけでは血肉にならない。問題意識のリストを持って本に向かうと、自分の切り口で捉えた多様な情報が入ってきます。それを組み合わせると、自分だけの知識になる。大学は読書会などの場やインセンティブなどを工夫して、本に親しむ習慣を学生に促してほしい」。3点目が、キャリア自律のマインドセットだ。「人生三毛作論やプロティアン・キャリアといった、自律的なキャリアの考え方を示しながら、人生100年をどう生きるのか、学生に意識づけをしてほしい」。また、社会人のリカレント、リスキリングにも高等教育機関が果たす役割は大きいとしたうえで、徳岡氏が強調するのが“キャンパス”としての価値だ。「大学・大学院は会社でも自宅でもない、第3の場。会社では、序列や制約により発揮しきれなかった良さを、心理的安全を感じられる大学・大学院で社会人がアウトプットし合うことで、知の融合が起きてきます。インプットは一人でできますが、社会の目線で議論する場があってこそ、ミドル・シニアが日本社会でリーダーシップを発揮しなければならないという役割を認識し、自分のためだけでなく、多くの人の幸せのために何をすべきか、という理念が描ける。多様な人が議論し、知識創造し合う“場”の価値を高めるためにも、大学・大学院はもっと開かれたキャンパスになってほしいと思います」。(文/武田尚子)1マインドポジティブマインドセット未来への思いチャレンジ精神2知恵知識・スキル経験の幅教養3仲間親しい友人ビジネスネットワークソーシャルネットワーク4評判発信力共感力独自コンテンツ5健康運動食事・睡眠こころ徳岡晃一郎『40歳からのライフシフト 実践ハンドブック』(東洋経済新報社)をもとに作成表 変身資産知的基礎体力を高等教育機関で涵養する01特集正解がない時代の「学びのデザイン」
元のページ ../index.html#17