カレッジマネジメント232号
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19リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022ことを議論する力」は次代に必要な力そのもので、新科目「公共」は大きな役割を果たす。また、日本史・世界史の枠組みを取り払って近現代の歴史を学ぶ新科目「歴史総合」において、大正デモクラシーから戦争への道、終戦から戦後の復興、高度経済成長という流れを「大衆化」という文脈で捉えることは、世界を席捲するポピュリズムに向かい合ううえで不可欠な学びだ。withコロナの厳しい状況下にあって、わが国においては「命」か「経済」かといった二項対立の議論になりがちだが、多くの社会課題の解決にはトレードオフの発想が必要であることは論を俟たず、数学Ⅰの二次関数は社会課題の解決に当たってトレードオフの曲線のなかのどこで最適解を見いだすかという見方・考え方を働かせるためにも学んでいる。物理基礎において物質によって電気抵抗の抵抗率が異なっていることを理解したり、化学基礎で物質の構成粒子について学んだり、生物基礎で遺伝子や免疫について知ったりすることは、事実を科学的に把握し論理的に検証して、素朴概念に訴えるフェイクニュースのウソを見極めるうえで極めて重要である。図1 3本の政策と実現に向けたロードマップ【政策1】子どもの特性を重視した学びの「時間」と「空間」の多様化<目指すイメージ①>一定のレベルを想定した授業展開教師による一斉授業子どもの理解度や認知の特性に応じて自分のペースで学ぶ子ども主体の学び同一学年で構成され該当学年の学び同一学年で学年・学校種を超える学びや学年を遡った学びも学年に関係なく集団行動が基本となる教室で同じ教室で教室になじめない子どもが教室以外の空間でも教室以外の選択肢教科担任制のもと教科ごとの指導教科ごと教科の本質の学びとともに、教科の枠組みを超えた実社会に活きる学びを教科等横断・探究・STEAM指導書の通り計画を立て教える授業Teaching子どもの主体的な学びの伴走者へCoaching教員養成学部等を卒業し、定年まで勤めることが基本万能を求められる教師同質・均質な集団多様な教職員集団理数、発達障害、ICT、キャリアなど専門性を活かした協働体制多様な人材・協働体制子どもの認知の特性を踏まえ、 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図り、「揃える」教育から「伸ばす」教育へ転換し、子ども一人ひとりの多様な幸せ(well-being)を実現するとともに、一つの学校が全ての分野・機能を担う構造から、分野や機能ごとにレイヤー構造にし、デジタル技術も最大限活用しながら、社会や民間の専門性やリソースを活用する組織(教育DX)への転換を目指す。これを実現するためには、皆同じことを一斉にやり、皆と同じことができることを評価してきたこれまでの教育に対する社会全体の価値観を変えていくことも必要となる。日本語を家であまり話さない子ども不登校・不登校傾向不登校・不登校傾向発達障害の可能性のある子どもGifted家にある本の冊数が少なく学力の低い傾向が見られる子ども日本語を家であまり話さない子ども発達障害等Gifted家にある本の冊数が少なく学力の低い傾向が見られる子ども家庭や経済力、認知の特性や興味などが異なる子ども達が「協働」で学ぶ機会の確保が公教育の肝※協働的な学びの重要ツールが情報端末であり、 そのためには情報モラルが重要教職員組織教師教科空間学校種学年主体※語彙や読解力の低下は重要な教育課題※限られたリソースのなか、個別最適な学び・協働的な学びを追求している学校や教師もたくさんいるが、現リソースでは一般的に限界があることを想定して図式化協働的な学び個別最適な学び中学校40人学級の場合自分の特性を理解し、ICTを活用しながら、自分に合った学び方で進めることができる学校のなかに通常の学級から離れて学習ができる学びの場、教育支援センター、不登校特例校、夜間中学、フリースクールをはじめ、NPOや民間等の力も活かしつつ、従来の学び方とは別の形で学ぶことができるタブレット等の活用により自分のペースで着実に自分の理解に応じて学びを進めることができる特別なカリキュラムを組み、ICTも活用しながら、日本語習得と同時に学びを進めることができる特異な才能のある分野を伸ばすため、大学や研究機関で学ぶことができる多様な子ども達に対してICTも活用し個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実子ども達が多様化するなかで紙ベースの一斉授業は限界2017年改訂により資質・能力重視の教育課程へと転換01特集正解がない時代の「学びのデザイン」

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