カレッジマネジメント232号
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24リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022学びの起点を個人それぞれに異なるワクワクに置けば、そこから展開される教育も当然個別に異なることになります。30名クラスならば30通りの学びが存在することを許容できなくてはいけません。こうした学びの実現には、デジタルが有効です。そのため、従来の一律・一斉・一方向型の授業から、EdTechを用いた自学自習や学び合いへと学び方の重心を移すべきというのが提言の内容になります。具体的には、生徒一人ひとりが個別学習計画を立案し、それをもとに「知る」と「創る」を循環させるなかで日々蓄積される学習ログの分析をもとに、計画を随時更新しながら、自分に最適な学び方を模索するサイクルを構築する必要があります。教師は生徒のサポーターとなり、生徒のワクワクに応じて学校外の力をうまく使うことで、教師自身の能力の限界が学びの限界にならない設計が可能になります。多様な力を生徒の成長のために活用していくのです。また、生徒の状況に応じて正しい「問い」を投げかけられる存在になる必要もあるでしょう。今までと違うあり方に戸惑う方々も多くいらっしゃいますが、こうしたあり方は今の学校現場の先生方の力をもってすれば十分に可能です。なぜなら、例えばホームルームや授業、進路指導、放課後活動等で、既に先生方は生徒達と個々に合った関係性を築いておられるからです。ボトルネックは能力ではなく、「自分達が今まで受けてきた教育とあまりに違う」ということを受け止める力でしょう。経験を糧にすることを否定するものではなく、自分の経験や知識をアンラーン、すなわち今後につながるように再整理し、学び直しなども通じて、新しい時代を担う人材の成長に寄り添える力を身につけることが必要かもしれません。個別最適化の学びには、その意図を正しく理解した先生方の存在が不可欠です。しかし、日本の教師は多忙すぎて、さらにこうした仕事が「追加の負荷」と捉えられがちなのも事実です。そこで、これまでの「業務」は本当に生徒の成長や安心・安全な場作りに必要なことだったのか、という見直しを含めて学校業務を可視化し、目的に合わせて再構築する学校BPR(学校の働き方改革)の推進も、同時並行で進めていきます。─3点目の「新しい学習基盤づくり」についてはいかがでしょうか。先に挙げた①②を実現するためには、子ども達が1人1台のパソコンを持ち、来たる5G時代にふさわしい高速大容量通信を活用した、常時インターネットにつながる学習環境の整備が必要です。BPR等も用いて教師の働き方改革を進め、創造的に個別伴走できるよう労働環境やスキル図表2 「未来の教室」が目指す姿「創る」(探求・プロジェクト型学習(PBL))「知る」(文・理の教科知識や専門知識)【2】学びの自立化・個別最適化(一人ひとりの興味関心や認知特性を踏まえて)一人ひとりの「ワクワク」【3】新しい学習基盤づくりICT環境、制度環境(到達度主義等)、学校BPR、教員養成 等【1】学びのSTEAM化※経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会 第二次提言概要資料より抜粋個人の学習ログデータベース個別学習計画デジタル化や地域社会連携により個別化された学びを達成する

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