カレッジマネジメント232号
26/108

26リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 20222005年の文系5学部の白山キャンパス(東京都文京区)への集約を皮切りに、およそ20年にわたり絶え間なく学部改革を進めている東洋大学。2017年には、社会課題、とりわけグローバル化に関わる課題の解決を見据え、情報連携学部、国際学部、国際観光学部、文学部国際文化コミュニケーション学科の3学部1学科を設置。2020年代は、キャンパスごとの強みや目指す方向性を明確にし、地域の課題解決も意識したキャンパス再編を進めている。社会課題の解決に向けた教育展開を学部・学科の新増設・改組という形で行う意図や、新設・改組の具体的手法について、矢口悦子学長に伺った。20年代に入ってから東洋大学が推し進めているのは、キャンパスごとの強みや目指す方向性を明確にしたキャンパスの再編だ。まずは赤羽台(東京都北区)、朝霞(埼玉県朝霞市)の2キャンパスについて、赤羽台に情報、福祉、スポーツ科学に関わる学部を、朝霞に命と食に関わる学部を集約し、赤羽台キャンパスにおいては、健康・スポーツ、子ども、高齢者・障害者等の分野において、東京都北区との連携事業も推進していく。その後、川越(埼玉県川越市)・白山キャンパスについても再編を検討していく予定だ。再編計画の設計思想について矢口学長は、「キャンパスごとの顔や目指す方向性、地域との関係を一体に考え、特色ある場にすることを強く意識しています」と話す。具体的には、「大前提として、学部・学科をつくり起こす際には、地域に限らない、世界も含めた社会課題を先読みして今後何が重要かをとらえ、研究者をはじめ大学が持っているリソースを用いてできる課題解決と学部の形を考えています。そのうえで、その学部を置くキャンパスの立地地域において、本学のリソースで貢献できる課題は何かという発想で地域の関係各位に相談し、対話を重ねてできることを一緒に練り上げていきます。後から見るとあたかも狙ったかのように、その地域に貢献できる学部・学科があると見えるのは、この過程があるからです」と説明する。東洋大学が学部・学科の新設・改組において「社会課題の解決」をより重視するようになった大きな契機は、2014年のスーパーグローバル大学創成支援事業<タイプB>への採択だったという。日本のグローバル化を牽引する大学として、世界の舞台で先端的な役割を果たす人材やグローバル時代の観光産業を担う人材、国際社会の情報戦略に長けた人材等の育成を通じて社会に貢献していくことを目標に掲げ、2017年には前述した3学部1学科を設置した。いずれも、社会ニーズであるグローバル化に呼応した人材育成を志向した学部・学科だ。社会課題に対応することを強く意識した、ここが東洋にとって1つの分岐だったと言えよう。続くキャンパスの再編も含めて、この20年、学部・学科のキャンパスごとの強みを明確にし、強みを生かして地域の課題解決に挑む学部を基盤とした大学だからこそ学部改革に第一に取り組む矢口悦子 学長東洋大学学部の新設・改組により社会課題の解決に資する学生を育てるCase Studies_1社会課題解決の教育展開を模索する高等教育事例社会課題解決型「学びのデザイン」を多様な方策で模索する高等教育の事例をご紹介する。

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る