32リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022宇都宮大学(宇大)と群馬大学(群大)は2020年度に共同教育学部を設置した。1つの学部ではなく、両大学に既設の教育学部同士で、全体の4割程度の単位を乗り入れ・合同で設計する教育躯体である。その狙いや背景、設置から2年経った現状について、宇大の小宮秀明学部長、群大の藤森健太郎学部長にお話を伺った。開設の背景には、2017年8月に文科省から出された、「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議報告書」がある。社会変化等に伴い教員に高度化が求められる一方で、少子化を背景に教員需要は減少。入学定員の見直しが必要であるほか、教員養成校が個別に育成する前提の現状のスキームでは限界があり、連携による新たな教員育成へのチャレンジが必要とする内容だ。共同教育学部はこの報告書を受けて検討・設置されたものである。両大学とも、それぞれの県で長らく多くの教員養成・輩出をしてきた実績校だ。県の教育委員会が国立の教育学部に寄せる期待は大きく、地元への教員人材輩出は大学の社会貢献としても外せない。しかし、国立の運営費交付金は毎年1%削減されており、学部教員が毎年1名減らされる程度のインパクトを伴う。求められる教育の高度化・多様化に比して体制は苦しくなるばかり。しかし、共同教育課程にすれば、2学部分のリソースを戦略的に配置したうえで、こうした期待に応えることが可能となるのだ。しかも、宇大は小学校教員養成に、群大は中学校教員養成に強みがあり、自校にない強みを補完できる関係にあった。こうした条件が重なり、3年ほどの検討を経て、共同教育学部設置に踏み切ったという。「少子化や財政的状況の厳しさのなかでも地域への責任をどう果たし続けるのかを考えた結果の設置でした」と小宮氏は当時を振り返る。また、教科ごとの学習とは別に、プログラミング教育や探究、主体的・対話的で深い学びの設計等、時代ごとにバージョンアップされる教育を俯瞰すると、自前主義だけではやっていけないという危機感もあったという。共同教育課程の根拠となる法令は、大学設置基準43条~49条が概ね該当する。両大学が31単位ずつを合同の形で出し合い、どちらの学生も62単位ずつ履修すること等が定められており、共同教育学部はこれらの規定を順守して設計された。設計時の苦労について聞くと、「学部の設置基準に加え、教員免許の課程認定という制約があるなかでの調整だということ。また、同じ領域の学部同士なので、どうしても教員の専門分野がバッティングすることがあり、その調整は大変でした」と小宮氏は言う。しかし、「当時苦労して調整した結果が今に活きている」と藤森氏は言う。昨今の教育DXを全て見越していたわけではないが、この設計段階で連携を前提に教育環境を強化していたため、現在慌てて何かを整備する必要がないという。時代の変化は速く、予測は不可能。だからこそ、常に改革を進めることには意味があるということだろう。具体的なカリキュラムを見てみよう(図)。まず、斉一(せいいつ)授業。双方がリソースを提供し合って構成する科目群で、片方の対面授業に遠隔授業システムをつなぎ、もう片方の学生がライブ授業を受講する同時受講科目だ。共同教育ならではの科目で、各教室に3つのスクリーンを配し、教員・黒板・学生の様子がそれぞれ投影されている状態で、双方向にコ他校との共同で挑む教育学部のバージョンアップ宇都宮大学・群馬大学 共同教育学部群馬大学宇都宮大学少子化・財政的困難のなか難易度を増す教員養成次代を見据えた連携が次の変化へのレジリエンスに単位乗り入れと協働で単独ではできない教育を実現社会課題解決の教育展開を模索する高等教育事例宇都宮大学共同教育学部 学部長小宮秀明 氏群馬大学 共同教育学部 学部長藤森健太郎 氏Case Studies_4
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