34リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 20222023年4月、徳島県神山町に新たな高専の開校が計画されている。高専の新設は約20年ぶりだ。「高専教育のバージョンアップ」とも言えるその構想内容について、学校長就任予定であるZOZOの元CTO大蔵峰樹氏にお話を伺った。高専とは、15歳から5年間のカリキュラムで優れた技術者を育成する、日本独自の高等教育機関である。全国に57校(うち51校は国立)存在し、特に国立高専はモデルコアカリキュラム(MCC)によって、分野共通能力・分野別専門能力・分野横断能力を培う教育システムだ。神山まるごと高専(仮称、以下神山高専)のコンセプトは「テクノロジー×デザインで、人間の未来を変える学校」である。高専の教育スキームを使い育成する新たな人材像は「モノをつくる力で、コトを起こす人」。これまでの高専が「モノをつくる優れた力を徹底的に培う」スキームだったとすれば、それを用いて事業創造や起業等、社会に具体的な価値創出をしていける次世代人材を育む。大蔵氏は自身も高専出身であり、大学院在学中に起業、その後日本最大級のECサイトZOZOの立ち上げやCTO(最高技術責任者)を経験してきた。まさにこのコンセプトの体現者と言えよう。学校の詳細を見ていこう。育成人材像を育てるための要素は、①ソフトウエアに関するテクノロジー教育、②UI・UXやアートに関するデザイン教育、③社会に価値を実装するアントレプレナーシップ教育の3点だ。これを科目群に落とすための概念としてまとめたのが神山サークル(図)である。モノをつくる力として①②を、社会と関わる力として③を定義し、さらに具体的な機能に分割し、それぞれを彩る形で科目を配置した。一般的な高専では初年次の基礎(一般科目)から段階を追って専門性を磨き、最終的にはスペシャリストとして学科ごとに深く学びを進める。神山高専では初年次から一般科目以外の科目も配置し、価値創出を前提にした専門性の育成をマインドセット等と合わせて複合的に行っていく建てつけだ。これについて大蔵氏は、「高専は高い技術力を培うことができる場ですが、実際に社会で通用する技術者になるためには、学科の専門性だけでは追いつかないことも多い。特にデジタルによってものづくりのハードルが下がっている今、協働して社会に価値を生み出すマインドセットがなければ、時代に合った高専教育にならない。高い技術力が単なる自己満足にならないためにも、全体を見通してチームを動かし、社会にアジャストして行動できる技術者が必要です。一番にこだわったのはそこでした」と話す。社会実装を考えれば、技術をフィットさせるためのデザインを専門性たるテクノロジーと融合させる必要がある。その両方の知識を兼ね備えた人材を育てたい。神山高専の発起人であるSansan社長の寺田親弘氏、後述するNPO法人グリーンバレー理事長の大南信也氏、元電通で株式会社2100CEOの国見昭仁氏らが描いたこうしたビジョナリーな内容を、文科省の認可申請のスキームに落とし込む際に苦労した点を問うと、「高専新設が20年ぶりということもあり、高度成長期の時代に合わせた設置「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育成社会への価値創出を前提とした新たな高専モデルを創る大蔵峰樹 学校長(就任予定)教育の“よそ者”が挑む次代技術者の育成神山まるごと高専(仮称)社会課題解決の教育展開を模索する高等教育事例Case Studies_5
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