カレッジマネジメント232号
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5リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022VUCAの時代、将来が予測不可能と言われて久しい。2018年11月26日に中央教育審議会において出された「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では、「大学の多様な強みを強化」し、社会ニーズに迅速に対応しつつ、大学教育の質保証の観点からも、「大学等の連携・統合」の必要性がうたわれている。社会に求められる全てを自前で対応するのではなく、他校・社会・産業界等と横断・連携しながら新たな価値を創出していく必要がある。こうした提言に呼応するように、多くの高等教育機関も企業連携や地域連携に以前よりずっと熱心に取り組んでいるように見える。しかし、連携は手段であって目的ではない。その先にどのような価値創造を置いているのか。何を満たすための横断・連携なのか。目標達成のためのアプローチ方法として、あり方を模索する必要がある。そのためには、本来注目すべき問題は何か、「問い」自体を疑う姿勢が不可欠だ。働き方改革というのであれば、「そもそもその問いは正しいのか」と思考する癖をつけることで、はるかにシャープな打ち手を講じることができるかもしれない。未知なる将来社会を支える人材を育成するには、作業における生産性向上とは別に、思考回路のアップデートも必要だ。では、正解がない時代に、高等教育機関はどのような学びをデザインしていく必要があるのか。改めてこうしたテーマに正面から向き合い、社会や初等中等の教育における変化を踏まえた高等教育の学びのあり方にフォーカスしたい。それが本特集の企画意図である。まず1章で社会の変化を改めて見据え、産業界における連携の動き、人材育成のトレンドを考察し、こうしたニーズをどう汲み取っていくのか、2章で動き始めた教育業界の動向を追った。社会のニーズに応じて新たな学びをデザインし、改革を進める目的は何か。仕組みありきではなく、立脚する存在価値に応じて、どのニーズに対応するのか、ドメインを定めたうえで自律的な改革が求められる。選ばれる大学になるためには、未来に向けて、どのような視点が必要か。弊誌がリニューアル後に置いている大テーマである。特集名の通り、この問いに「正解はない」。本特集がその探索の参考となれば幸甚である。Interviewゲームのルールはどう変わったのかビジネスコンサルタント 細谷 功 氏Case融合視点の社会課題解決とはANAオムロン×スクウェア・エニックスInterview 人材育成のトレンドπ型人材が示すキャリアの方向性多摩大学大学院教授、株式会社ライフシフトCEO 徳岡晃一郎 氏Contributionデジタル時代の初等中等教育と大学経営内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局審議官 合田哲雄 氏Interview 「未来の教室」構想が目指すものボストン コンサルティング グループ(BCG)マネージング・ディレクター&パートナー 折茂美保 氏Case社会課題解決の教育展開を模索する高等教育事例東洋大学/上智大学/東京工業大学/宇都宮大学・群馬大学/神山まるごと高専(仮称)Editor-in-chief’s Perspective 編集長の視点●1章 社会からの視点提供:  社会変化のダイナミズム●2章 教育業界の現状リポート: 進み始めた教育業界の進化

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