カレッジマネジメント232号
53/108

53リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022(図9)を見ても、高大接続改革が目指す新しい「学力の3要素」の育成に対する保護者の期待が高く、とりわけ探究学習への期待が大きいことが分かります。また、取材等でお会いする高校の先生方のお話からも、探究学習で得た力が入試で評価され、大学での学びにつながることを各大学が伝える意義は大きいと感じています。先導的な事例として、例えば島根大学が行っている「へるん入試」では、地元の高校と連携し、高校の探究学習で培った学びの種を入試前の個別面談を通じて確認し、本人がやりたいことが、将来どうつながっていくのかというキャリア像や、進路の方向性、本学での実現の可能性まで対話しています。そして入学者に対しては入学前・入学後教育も実施し、学生が自らの問いを探究し、昇華できるような機会を提供しています。なお、探究学習は2022年度からの本格導入に先駆けて多くの高校で実施されていますが、壁にぶつかっている先生方も少なくありません。生徒が自ら問いを立て自分なりの答えを見つける力を育てるのが探究学習ですが、「既に存在する問い」の答えを教えることに慣れた先生にとっては、学習の第一段階となる「生徒が自ら問いを立てる」とはどういうことなのかをイメージするのが容易でないからです。他方、大学の先生方は研究を通して、自ら問いを立てることを常に求められており、その探究サイクルの知見を生かして、地域の高校の探究学習を支援している例もあります。そうした活動も、高校生や保護者にとってその大学や学部・学科での学びへの理解を深める機会になるでしょう。そして、大学は、学生を受け入れたい、育てたいという思いやスタンスをメッセージすることが大事だと思います。小林:入試要項を出して終わりということではなく、その背景を保護者や高校生に伝えること。それが大切だということですね。(文/泉 彩子)調査概要【調査実施者】 •一般社団法人全国高等学校PTA連合会/ 株式会社リクルート【調査対象】 •全国の高校2年生とその保護者 – 全国高等学校PTA連合会より依頼した9都道府県、各3校ずつ計27校の公立高校(2年生2クラス分の高校生と保護者)に発送し、 計26校より協力を得た 【調査期間】 • 2021年9月14日~10月28日 【調査方法】 •学校を通した質問紙による自記式調査/またはWeb画面からの回答 – ①高校生:ホームルームにてアンケートを配布 ②保護者:高校生から保護者へアンケートを手渡し ③紙調査票に回答、または記載のQRコードからWeb調査画面にアクセスして回答 ④紙調査票、またはWebへの回答完了証を、学級担任が高校生と保護者分を取りまとめ、その後学校責任者が学校分として返送 【有効回答数】 •高校生1,815人/保護者1,529人今回の調査結果に表れた高校生と保護者の関係性は、高校生の進路選択にとって非常にポジティブなものだと感じている。特に注目したいのが両者の会話が増えているだけでなく、お互いに考えをやりとりする「対話」が行われていること。進路に正解はなく、答えを出すのは本人だが、迷わず答えを出せる高校生は多くない。経験の寡多の問題のみならず、今の高校生はSNS等を通して社会を可視化しやすく、そのぶん迷いも生じやすいからだ。だが、そこに対話があれば、答えが見つけやすくなる。大学にはこうした対話を活発化したり、高校生が今と大学での学び、将来像をつなげ、地に足をつけて進路を選べるような情報提供のあり方が求められていると考える。(赤土)●第10回調査は、コロナ禍の影響もあって高校生と保護者の相互理解が深化し、進路選択に対する保護者の影響力が高まっていることがうかがえる結果となった。一方保護者は、社会が不透明さを増す中、これからをどう生きるべきか、大学の価値とは何か、自らがその答えを探す段階にあり、進路の助言に難しさを感じている。大学に価値がある、という答えの根拠となる情報を高校生や保護者に伝えられるか否かで、各大学の今後に差が出るだろう。また、今回の調査で高大の学びの接続に関する大学への期待のさらなる高まりが確認できたことの意味は大きい。その期待に応えるために大学ができることは、入試関連の情報提供にとどまらないはずだ。(小林)これから求められる高等教育機関と保護者のコミュニケーションのあり方02特集大学の改革は保護者に伝わっているか

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る