カレッジマネジメント232号
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61リクルート カレッジマネジメント232 │ Apr. - Jun. 2022の1つに、「リテラシーレベルをクリアしたうえで特色ある取り組みになっているか」という点がある。KITは「AI基礎」で数理解析に特化した企業と共同で教材開発を行った点が評価された。教材開発を連携で行った背景には何があるのか。谷氏はKITの建学の精神にその根源があるという。KITの建学の精神は「高邁な人間形成」「深遠な技術革新」「雄大な産学協同」の3つ。このうち3つ目が、「産業界が求めるテーマを積極的に追究し、地域社会に貢献する」という趣旨の言葉である。「本学にとって産業界との連携協働は開学以来当たり前の文化です」と谷氏は言う。先に挙げた人材開発セミナーやPD科目もそのスタンスの表れだ。また、専門教員の半数は実務出身者になるように調整され、大掛かりに構えなくても、産業界側の人脈等リソースが活用されやすい基盤が整っているという。アカデミアと社会は常につながっているのだ。こうしたDS教育の実績については、2020年度受講生のうち必修5科目の修了者は90.3%、未修了者は9.7%(1科目でも不合格だと未修了)となっている。満足度は「満足」「まあ満足」を合計すると概ね90%を超え好評だ。「まあ満足」をどう「満足」に引き上げるのかが次の課題であるが、踏まえるべき観点が2つある。1つは、PD科目における特性だ。「PD科目はランダムに形成したチームで取り組む科目なので、どうしても学習意欲や相性等に不満がたまりやすい」と谷氏は言う。もう1つが、学生の属性が多様得」に該当する5科目9単位の全学必修化だ。まず「導入」の「修学基礎A」では、大学教育を理解するとともに、社会における専門分野のつながりやAIやDSの活用例を学ぶ。「AI基礎」は「AIとは何か」を学ぶ科目で、数値計算プラットフォームMATLABを展開するMathWorks社と共同で開発した教材を使う。「架空のデータで教材を作っても学生は面白くない。やはり実際の課題のダイナミズムに触れてこそ、解決力のリアリティが高まる」と谷氏は言う。「基礎」は2つのPD科目と「AI基礎」の3科目。「心得」は「AI基礎」と、コンピュータの使い方やセキュリティ等について学ぶ「ICT基礎」の2科目が該当する。こうした科目群を必修とすることで、次世代エンジニアに必要な基礎素養を漏れなく培い、その後の専門学修につなげるという流れだ。1クラスは30~80名で編成され、TAやSAを配置してサポートを行う。PBL学習を通して実データを使ったDS等を学習するほか、応用的な学びについては選択科目を充実させている。これとは別に、夏と冬には3つの集中講座コースが用意されており(図2)、テーマに沿って学びを深めることも可能だ。これは履修証明プログラムとしてリカレント教育も兼ねており、定員は学生と社会人で分けて設定され、同じクラスで受講する。クラスの多様性は思考の幅を拡げるメリットが大きく、リカレントは今後も強化していく方針だ。MDASHリテラシー「プラス」として認定を受ける条件アカデミアと社会をつなげ、リアリティを循環させる迅速な展開と実績から臨機応変にチューニングする体制図1 KIT数理データサイエンス教育全体計画(2021年度版)AIプログラミング入門データサイエンス基礎データサイエンス応用AI応用ⅠIoT基礎IoT応用IoTプログラミング入門ロボティクス基礎エンベデッドシステム情報ネットワーク基礎修学基礎APD入門AI基礎PDⅠICT基礎ネットワークセキュリティ技術者のための統計AI応用Ⅱ選択科目専門科目数理・データサイエンス・AIを活用するための基礎的な知識・スキル導入社会におけるデータ・AIの利活用心得データ・AI利活用における留意事項基礎データリテラシー社会実装型教育研究応用基礎リテラシーKIT数理データサイエンス教育プログラム機械工ロボティクス航空システム電気電子工情報工環境土木工メディア情報経営情報心理科学建築応用化学応用バイオAIの特徴を活かした科目(学習・認識・予測/判断・言語/知識・身体/運動)企業・地域社会プロジェクトデザインⅢ(卒業研究)

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